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「老老介護のリスクと相続」~老老介護の先には~

2025/12/29 相続
「老老介護のリスクと相続」~老老介護の先には~
 
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事例

Aさんから、兄夫婦の相続でご相談をいただきました。
ご夫婦間にお子様がいない兄Xさんと妻のYさん。Yさんは数年前から、寝たきりで意思表示も十分にはできない状態で、Xさんが懸命に自宅介護をされていました。ご健在でしたが、Xさんご自身も高齢で生活面に不安があったことから、隣の県に住むAさんご家族に定期的な「見守り」を頼んでいたということです。
そんな老老介護の中、Xさんが突然ご自宅で亡くなられてしまったのです。日頃の疲労が蓄積されたのかもしれません。Aさんからの電話に出ないため、何かあったのかと駆け付けたところ、Xさんは既に亡くなられていたそうです。そして、Xさんの介護に頼るほかなかったYさんも衰弱が進み、その日の内に亡くなられたとのことでした。
老老介護では、介護している方が亡くなると介護されている方は生きていけない、という現実がそこにありました。

結果

ご依頼をいただき相続財産を調査したところ、ご自宅不動産はXさん名義、ご夫婦それぞれに預貯金がありました。お子様がいないため、生前に遺言書作成を勧めたようですが書かれておらず、最終的にご夫婦の相続人はそれぞれの兄弟姉妹…Xさん側はAさんを入れて4名、Yさん側は5名となることが分かりました。
また、今回はXさんが亡くなった後にYさんが亡くなったので、AさんはXさんの相続人になりますが、Yさんの相続人にはなりません。つまり、Yさんの相続手続はYさんの兄弟姉妹だけで手続きをしてもらう必要があります。さらに、Xさんの相続については、AさんたちXさんの兄弟姉妹と、Yさんの兄弟姉妹が相続人として手続きを行う必要があるため、Xさんの兄弟姉妹だけでなく、Yさんの兄弟姉妹全員に連絡を取り、協力をお願いしなければなりませんでした。
手紙や訪問で協力を呼びかけ、ようやく、Xさんの遺産分割について、不動産は売却・預貯金は解約して、法定相続分での分割協議がまとまりました。
2年以上の月日を要したうえ、法定相続分での分割となったことで、AさんたちXさん側の相続人は、Xさんの財産の4分の1のみを取得、Yさん側の相続人がXさんの財産の4分の3を、さらにYさんの相続財産を全部取得するという結果となりました。当然、Aさんにとっては釈然としない結果ではありましたが、ひとまずは、長くかかった手続きが無事に完了したことへの安堵が大きかったようです。

一筆の土地を3つに分筆することで、本来分けられない不動産の「現物分割」が可能となります。また、前述の「小規模宅地等の特例」も、分筆後の実家の敷地部分については、そのまま適用となる為、より多くの減額が期待できます。
分筆登記は土地家屋調査士が行い、別途費用がかかりますが、それでも全体としては損をしないと説明しました。
相続人全員にご了承いただき、土地家屋調査士により調査を開始しました。
測量もあり、時間を要しましたが、申告期限までには分筆登記、そして遺産分割による所有権移転登記が完了しました。相続税も自前の預貯金で納税ができ、借り入れには至りませんでした。

老老介護のリスクと相続

相続が発生して遺言がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行うことにより、各相続人が遺産を具体的に取得します。ただ、遺産が不動産である場合、分割は容易ではありません。遺産の分割方法としては、現物分割、換価分割、代償分割などがあります。 

●老老介護

高齢化社会が加速する現代で、介護者も要介護者も65歳以上の高齢者という、いわゆる「老老介護」の問題が深刻化しています。「老老介護」は介護者・要介護者双方の体力・精神的負担が大きくなること、事故や健康問題を引き起こすリスクが高まること、社会的な孤立を深めることなどの問題点が指摘されています。
「共倒れ」とならないために、家族だけで抱え込まず、公的支援や外部サービスの活用、見守りサービスや成年後見制度の検討などを通して、負担を軽減していくことが大切です。

●亡くなる順番で変わる相続分

 お子様がいないご夫婦のどちらかが先に亡くなった際、両親(直系尊属)が既に亡くなっていれば兄弟姉妹(兄弟姉妹が既に亡くなっていたら甥姪)と配偶者が相続人となります。その場合の法定相続分は、兄弟姉妹(甥姪)全員で4分の1で、配偶者が4分の3です。
 例えば今回のケースのように、夫の後に妻が亡くなり、その両親(直系尊属)が亡くなっていると、妻の兄弟姉妹(甥姪)が相続人となり、夫側の兄弟姉妹が妻の相続手続に登場することはありません。しかし、上記の通り、夫の財産の4分の3は配偶者、つまり妻側の相続人の方へ移転することになります。亡くなる順番により財産が思わぬ方向に引き継がれていくことがあるため、お子様がいないご夫婦は、「双方」が遺言書を遺されることをお勧めします。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会