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| ■交通事故だけではない送迎業務中の事故 デイサービスで送迎業務中に事故が立て続けに3件発生しました。最初は送迎車から居宅の玄関までの移動介助中に転倒して骨折が生じ、謝罪や賠償対応に苦慮しました。所長は主任に対して、送迎介助員に介助方法を指導するよう指示しました。次に、幼稚園脇の道路で母親たちの間から飛び出してきた園児と接触する事故が発生しました。調べたところ、過去に同じ場所でヒヤリハットが起きており、ヒヤリハット事例がまったく活用されていないことが判明しました。 そして遂に、送迎車からの降車忘れが起きました。最後部座席で眠ってしまった利用者を降ろし忘れて車に施錠してしまい、利用者に気づかれて「こらー、降りてないぞ!」と大声で叫ばれ、家族からは猛烈なクレームが寄せられました。所長は高齢のドライバー3名に対して1時間の研修を実施し、後部座席の確認方法や業務終了時の点検方法を詳しく指導しました。送迎業務のリスクは多岐にわたり、所長は途方に暮れてしまいました。 |
■送迎業務には指導管理者が居ない
所長が途方に暮れるのも無理はありません。送迎中の事故は非常に多様でリスクが大きいにもかかわらず、安全管理を担う専任の担当者がほとんど配置されていないからです。デイサービス内の介護業務には主任など現場責任者がいて細かな指導が行われますが、ドライバーの送迎業務の安全管理を専門に担当する者は、デイサービスにはいない場合が少なくありません。
送迎業務は介護サービスを提供するための付随業務として見落とされがちですが、リスクの大きさや多様性は介護業務をはるかに上回ります。最近起きた送迎事故を上げてみましょう。

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1.送迎中の車内で利用者が脳梗塞発作を起こしたが搬送が遅れてクレームに! 2.車椅子固定装置が外れ発車時に後方に転倒し後頭部を強打し救急搬送 3.デイに着いた時、送迎車からの利用者を降ろし忘れて利用者がクラクションを鳴らした 4.自宅に送りに行った利用者を降ろし忘れて送迎車内に一晩放置した 5.送迎時の移動介助中に奥様が「ここでいい」と言ったため引き渡し後に転倒、家族トラブルに 6.高齢ドライバーの送迎車運転中に脳梗塞発作を起こし電柱に衝突、同乗中の利用者が死亡 7.独居利用者送迎時に無応答だったが対応せずに戻ったが、翌日居宅内で倒れていたのが発覚 8.送迎車がデイ到着し降車後、そのまま行方不明になりコンビニで保護された 9.送迎車が目の前に飛び出してきて転倒した小学生を叱ってデイに戻ったが、ひき逃げで逮捕 |
■多様なリスクには対応のスペシャリストが必要
上記のような多様なリスクに対応するため、送迎事故を「運行中の自動車事故」と「乗降・移動介助中の事故」の二つに大別し、可能な限りマニュアル化することを提案します。例えば、移動介助では居宅の移動環境の改善や家族との綿密な打ち合わせを行い、介助方法を明確にマニュアル化します。運行中のヒヤリハットについては、大きなヒヤリハットマップに記録して運転手間で危険箇所を常時共有できるようにするとよいでしょう。
送迎車からの降ろし忘れ事故には、運転手のミスを前提にデイのスタッフが送迎車内チェックと出欠確認を徹底し、多重の対策を講じます。しかし、これらの対策を講じているにもかかわらず、7月には消費者庁の事故調査委員会が「車椅子乗車の安全管理が不十分である」として調査に乗り出すなど、新たな課題も浮上しています。そこで、法人に1名の「送迎業務安全管理者」を置き、責任者を明確にすることが必要ではないでしょうか。
監修 株式会社安全な介護 山田 滋
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