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12月号「不動産の分割」~分筆で一挙解決~

2025/12/01 相続
12月号「不動産の分割」~分筆で一挙解決~
 
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事例

Aさんから、お父様のXさんが亡くなられて4ケ月ほど経過したため、そろそろ相続税の準備をしなければ、とのご相談がありました。
相続人はお母様と弟Bさんを合わせた3人で、主な相続財産は、現在お母様が一人でお住まいのご実家の建物と敷地で、その敷地内にAさん名義・Bさん名義の家がそれぞれ隣接して建っています。つまり、3軒の家が並ぶ面積を有する一筆の土地が相続財産で、多額の相続税が予想されました。金額によっては、金融機関から借り入れをしなくてはなりません。早速、税理士を交えて打合せを行いました。

結果

遺産分割は、実家の建物と土地はお母様が、Aさん・Bさんの家の敷地はそれぞれAさん・Bさんが相続することで全員合意されています。ただ、3軒が建っているのは一筆の土地の為、分けることはできず、土地を3人で共有するという登記しかできません。また、お母様が相続される家の敷地部分については、「小規模宅地等の特例」が適用され、相続税の課税価格が減額されますが、その敷地のお母様の持ち分しか対象になりません。
そこで、税理士から「実家、Aさんの家、Bさんの家、それぞれの敷地で分筆をしたらどうか」と提案がありました。

一筆の土地を3つに分筆することで、本来分けられない不動産の「現物分割」が可能となります。また、前述の「小規模宅地等の特例」も、分筆後の実家の敷地部分については、そのまま適用となる為、より多くの減額が期待できます。
分筆登記は土地家屋調査士が行い、別途費用がかかりますが、それでも全体としては損をしないと説明しました。
相続人全員にご了承いただき、土地家屋調査士により調査を開始しました。
測量もあり、時間を要しましたが、申告期限までには分筆登記、そして遺産分割による所有権移転登記が完了しました。相続税も自前の預貯金で納税ができ、借り入れには至りませんでした。

不動産の分割

相続が発生して遺言がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行うことにより、各相続人が遺産を具体的に取得します。ただ、遺産が不動産である場合、分割は容易ではありません。遺産の分割方法としては、現物分割、換価分割、代償分割などがあります。 

●現物分割

 不動産をそのままの形で分割する方法で、一筆の土地の場合は分筆登記が必要となります。分筆により現物分割が可能となりますが、分筆後の土地の条件(形状や道路付けなど)をすべて同じにすることは難しく、価値に差が  生じ、公平な結果にならない可能性があります。また、今回の事例のように、相続のタイミングで土地を分筆して遺産  分割をする場合、一般的には、①土地の地積を正確に測る為に測量、②その上で分筆登記・地番の割り振り、  ③遺産分割協議により相続登記するという順序で行います。なお、分筆登記には境界確定測量が必要となることが多く、完了までに時間を要するので、相続税の申告期限がある場合は注意が必要です。

●換価分割

 不動産を売却し、その売却代金を相続人で分ける方法です。公平に分配できますが、売却益に所得税がかかる可能性があります。

●代償分割

特定の相続人が不動産を相続し、その代わりに他の相続人に対して、相続分に相当する金銭を支払う方法です。取得した相続人がその不動産に住み続けたい場合などに使われます。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会