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| ■「昔は将棋が大好きだった」と息子さん Dさん(75歳男性)は要介護3で認知症が重度の利用者で、月1回ショートステイを利用しています。 これまで、ショートステイで他の利用者に迷惑をかけることがあったため、利用を断られるなどして、息子さん は大変苦労していました。ある時、ショートステイの相談員が「お父様が夢中になれる大好きなものは無い のでしょうか?」と息子さんに尋ねました。すると、息子さんが「昔はよく休みの日に一人で将棋盤に向かって過ごしていました」と話してくれました。 相談員は次のDさんの利用時に、デイサービスにあった将棋盤と駒を借りてきて、Dさんの居室のテーブル の上に置いておきました。するとDさんは一日中将棋盤の前に座って夢中になり他の利用者とのトラブルが 無くなりました。 ショートステイの介護職たちはDさんの変わりように驚き「そうだよな、自分の好きなことやってて気分が悪 い人は居ないよね」と納得したのでした。そして、認知症の利用者の家族から「好きなもの・好きなこと」を 聞いて、機嫌よく過ごしていただくことに活用するようになりました。相談員は家族に「好きなもの・好きなこと」 を記入するための「好きなものリスト」を作り、家族に書いてもらっています。 |
■認知症利用者の周辺症状への対応
Dさんが好きな将棋をしてショートステイで落ち着いたことをきっかけに、不穏になりやすい認知症の利用者の「好きなもの情報」がケアに役立つことが分かりました。他の女性利用者でも、不穏になると他の利用者に迷惑をかける方がいたため、家族に好きなものをお聞きしました。すると娘さんは「母は『風と共に去りぬ』が大好きでした」と言います。職員がDVDを持っていたので、デイルームで見ていただくと涙を流して喜び、ショートステイの期間中穏やかに過ごしていただけました。

■家族に利用者の好きなものを聞いたら「寿司です」と言われた
ショートの相談員は、不穏になりやすい利用者のご家族から「好きなもの・好きなこと」聞いてみることにしました。ところがあるご家族に「お母様の好きなものは何ですか」と聞いてみると、家族は「母の好物はお寿司です」と答えました。しかし、落ち着いてもらうためにその利用者だけお寿司を出す訳にはいきません。そこで、相談員はたくさんの「好きなもの」をリストにして、記入してもらうことを考えました。
具体的には、「好きな歌」「好きな花」「好きな歌手」 「好きな俳優」「好きな映画」「好きな野球選手」「好きな力士」というようにたくさん挙げて記入してもらうのです。 こうしてたくさん挙げてみると、私たちは日常生活でたくさんの好きなものに囲まれて暮らしていることが分かります。ふと耳にした歌が自分の好きな歌だと、得したような気になります。人は誰でも色々な種類の好きなものを持っています。その好きなものに少しでも生活の中で触れることによって生活に彩りが生まれ、認知症利用者への個別ケアによって事故もトラブルも減るのではないでしょうか。

「好きなもの・好きなこと」リストを差し上げます こちら