「施設の責任」と訴える家族

 施設主催の夏祭りで盗難事故が発生しました。夏祭りの最中に入所者Hさんの娘さんから「部屋に置いてあったバッグの財布から、現金を盗まれた」と施設長へ申し出があったのです。更に娘さんは「犯人は職員かもしれない、部屋の周りをウロウロしてたから」と言っています。施設長はHさん・娘さんと居室に行って、バッグや財布などを見せてもらい盗難の発生の確認をしました。翌日、施設長は主任へ「盗難の被害金額5万円を施設で責任を持って欲しいと娘さんが言ってきたので、調査をしなくてはなりません」と伝えました。主任は、Hさんの娘さんが盗難に遭ったという当日の午後3時半くらいに、フロアに居た職員を呼んで心当たりがないか尋ねましたが、当然ながら職員は誰も心当たりがありません。施設長はその旨を娘さんに報告しましたが「施設の責任だから補償して欲しい」と言われました。結局、娘さんには納得してもらえず、施設が被害額を支払いましたが、事故の時フロアに居た職員が疑われ後味の悪い夏祭りになってしまいました。

施設内で盗難事件が起きたら施設は責任を問われるのか?

利用者や家族の持ち物に対する管理責任はない

 施設内で利用者や家族の持ち物や現金が盗難に遭ったと訴えがあった時、多くの施設は適切な対応ができずに本事例のような混乱が生じます。病院の入院病棟でも多くの盗難事件が起きてると聞きますが、対応を誤って、疑われた職員が辞めてしまうなどの問題が起きているそうです。施設や病院の対応のどこに問題があるのでしょうか?

 施設も病院も家族などから盗難の訴えがあると、不祥事が発生したかのように考え、公にせずに内部で処理しようとすることが問題です。施設や病院で起こる窃盗事件は、犯人は捕まらず解決が困難です。このような問題を内部で処理しようとすれば、職員同士が疑心暗鬼になったり、家族から責任追及も受けることになり、トラブルにも発展します。では、施設や病院は盗難事件に対してどのように対応したら良いのでしょうか?

警察に届け出て捜査に協力する

 もともと、施設は利用者や面会の家族の持ち物に対して、管理責任があるとはいえません。ですから、盗難事件として警察に被害届けを出してもらい、中立な立場で捜査に協力するようにしましょう。

対応のポイントは次の通りです。

<盗難事故対応の手順のポイント>
①被害状況の確認:被害が起きた場所や時刻、被害状況や金額などを被害者から聞いて記録する。
②警察への届出を勧める:盗難事件は犯罪であり、施設で対応できない旨を説明し、警察への被害届け出を勧める。
③警察への協力:被害状況の記録、防犯ビデオの映像、職員の事情聴取など警察の捜査に協力する。
④職員への対応:事情聴取などの警察の捜査への協力を要請し、不要な詮索をしないよう徹底する。
⑤警察への対応:業務上の資料は提出して協力するが、職員の身上情報などは提出しない。
⑥被害者への対応:警察の捜査への対応もあり、被害者の補償などはできないことを説明する。

※[施設内の盗難事件への対応ポイント]を作成しました。ご参考にしてみてください。
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執筆者情報

監修 株式会社安全な介護 山田 滋 

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