◆不在に気付く機会は6回あった
Mさんは障害福祉サービス施設を利用している知的障がいのある利用者で、毎朝施設まで送迎車でやってきます。その日も運転手がMさんたち利用者を迎えに行き、送迎車に乗せて9時頃施設に到着しました。運転手は他の利用者を降ろしましたが、Mさんを降ろし忘れて、車は午後3時まで炎天下の駐車場に放置され、中に取り残されたMさんは熱中症で亡くなりました。Mさんは知的障害があり、自力で送迎車を降りることはできませんでした。
施設の職員は来所すべき利用者が来ていないことになぜ気付かなかったのでしょうか?県の調査で次のように判明しました。「同施設が利用者の人数を確認する機会は、朝に連絡帳を預かる際や作業前の点呼、昼食時、休憩時など計6回。厨房の職員が昼食時に食事が余っていたことなどから不在に気付いたが、施設は安否確認をしなかった。出欠を記す黒板で男性は出席扱いになっていた」と。
後に、出欠確認を怠った職員と運転手が業務上過失致死の罪で、禁固1年の判決を受けています。
(2017年7月13日に埼玉県で発生した事故)
送迎車の降ろし忘れ事故はほとんどが7月に起きている
◆7月は送迎車降ろし忘れ事故防止月間
保育園や幼稚園、デイサービス、知的障害者施設など様々な施設で、送迎車の降ろし忘れ事故が発生していますが、そのほとんどが7月に起きています。この事から、通所施設では7月は降ろし忘れ事故防止月間と位置付けて、降車時確認などの防止対策を改めて徹底する取組をしてはいかがでしょうか。

降ろし忘れ事故防止対策の徹底というと、運転手が降ろし忘れないように注意したり、降車完了時の確認ばかりが強調されますが、出欠確認の徹底が大変重要な対策になります。本事例では、朝の出欠確認を怠ったばかりか、昼食時に食事が余って利用者の不在に気付きながら、何らの安否確認もしていませんでした。他の事故ではどうだったのでしょうか?
福岡県 保育園 | 「午後4時のおやつの時間にH君がいないことに気付き、園内と周辺を探したがワゴン車内は捜さなかった」とあります。不在の認識がありながら確認を怠ったことになります。 |
福岡県 保育園 | 保育士は出欠確認を毎日励行しておらず、当日T君が登園していないことを認識していながら、“欠席だろう”と解釈し母親に連絡を入れませんでした。 |
兵庫県 デイサービス | 帰宅しないことを不審に思った家族が当日夜に高砂署に相談。署員から電話で問い合わせを受けた運転手は、「自宅に送り届けた」と答えていた。 |
静岡県 幼稚園 | 職員が園児を確認せず、出欠確認アプリを勝手に一括入力したので、出席していることになっていた。 副担任がTちゃんの不在に気付き担任に伝えたが、担任は家族に連絡を入れなかった。 |
◆運転手のミスだけが原因ではない
上記のように、降ろし忘れミスが発生していても出欠確認を徹底してれば、死亡事故という最悪の事態は免れた可能性が高いのです。人は必ずミスをしますから、ミスが発生したことをチェックして事故につながらないように対策を打つことが重要なのです。
<ヒューマンエラー事故の防止対策>

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