■「お風呂に入りましょう」と話したが・・・
 特別養護老人ホームの職員Hさんは、認知症利用者が多いフロアで勤務しています。新型コロナウィルスの感染対策でマスクを付けて介護をするようになってから、認知症の利用者との意思疎通がうまくいかないことが良くあると感じています。新型コロナの5類移行に伴い、感染対策が緩和され、施設でもマスクが外せると期待しましたが、重症化リスクが高い高齢者施設ではマスクが継続となってしまいました。
今日も認知症のある利用者のMさんに、「お風呂に入りましょう」と声を掛けましたが、全く反応がありません。マスクで声がくぐもって聞こえないのかと思い、大きな声でもう一度「お風呂に入りましょう」と声を掛けると、ビックリした様子で「おお怖い」と言って表情がこわばってしまいました。その後は何度声を掛けても、Mさんは頑として入浴を拒否してしまい、結局その日の入浴は諦めました。他の職員も認知症の利用者と意思疎通がうまくいかず、利用者が急に怒り出して叩かれることもありました。いつまでマスクを付けたまま介護業務をしなければならないのかと、途方に暮れるHさんでした。

withコロナの認知症ケアとコミュニケーション

■認知症ケアに必要なコミュニケーションスキル

認知症利用者と職員の意思疎通がうまくいかないと、暴力行為などのトラブルに発展しひいては虐待行為につながることがあります。そのため、認知症ケアに携わる職員は利用者との意思疎通のスキルや、意思疎通がうまく行かない時の対処法を学ぶ必要があるでしょう。

本事例でもMさんを入浴に誘ったことがうまく伝わりませんでした。職員が入浴を諦めたので問題は起こりませんでしたが、無理矢理入浴させようとしたらトラブルが起きていたかもしれません。このように認知症ケアには、認知症利用者に対するコミュニケーションスキルが欠かせません。

■非言語コミュニケーションを駆使して気持ちを伝える

私たちは言葉でコミュニケーションを取っていると思っていますが、実はそうではありません。コミュニケーションで伝わることを全部で100%とすると、言語で伝わる割合はたった7%で、非言語の割合は93%もあるそうです。非言語のうちで話し方によって伝わること(口調、抑揚、語調の強弱など)が38%、ボディーラ ンゲージ(表情、身振り手振り、姿勢など)が55%と言われています。
 すると、たとえ言葉の意味が理解できない認知症の利用者でも、非言語コミュニケーションを工夫すれば意思疎通は十分できるといえるのです。しかし、マスクをしたままでは非言語コミュニケーションでも重要な表情が相手に十分見えません。特に、感情を伝えるのに重要な口が隠れてしまっており、気持ちを伝えるのは容易ではありません。

■マスクをしたまま目で表情を作る方法

介護現場の職員教育に携わる、介護リスクマネジメント講師の川村亜希さんは「目の表情だけで気持ちを伝えるコミュニケーションスキル」研修をしています。たった16分の動画ですが、コツさえつかめば誰でもすぐにできるようになります。

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執筆者情報

監修 株式会社安全な介護 山田 滋 

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