はじめに

遊んでいるときにお友達を噛んでしまった!この様なトラブルは園でよく見受けられるのではないでしょうか。

特に3歳~4歳ごろは、お友達に言葉でうまく伝えられず、衝動的に噛んでしまうことがあります。これは、自分の気持ちを表現する一つの手段として言葉より先に行動に移してしまうことが原因として考えられます。しかしながら子どもが何かあるたびに噛んでしまったら、怪我やトラブルの原因となってしまいます。

噛むという行為は子どもにとってはコミュニケーション手段の一つです。ここでは、乳幼児期の言葉の発達に焦点をあて、なぜ噛んでしまうのか、そしてその対処法について考えたいと思います。

子供が噛む原因は?

子どもが噛む原因は様々です。「自分でやりたい!」「お母さんに甘えたい!」いう意思表示であったり、挨拶の意味合いで噛むこともあります。そして、先に述べたようにお友達とのやり取りの中で攻撃の手段となることがあります。いずれも子どもが自分にできる手段を使って、何とかコミュニケーションを取ろうとしているのです。

では、なぜ言葉で伝えず行動に移してしまうのでしょうか?子どもの言葉の発達過程を知ることで、その原因が見えてくるかも知れません。以下に、子どもの言葉の発達について大切なポイントをご紹介します。

1)言葉の獲得のために大切な「共同注意」

生後から1歳頃までは、微笑む、微笑まれるといった視覚的なコミュニケーション、抱っこなどの触覚的なコミュニケーションなどを通して、他者の働きかけによって関係性が築かれていきます。この関係が後の意図的な言葉の獲得に繋がっていきます。そして、生後9か月頃には大人の顔を見つめて注意の向かう方向を定め、大人と同じ対象物を見て共有し始めます。こうした同じ対象物に対して志向性を持つことを「共同注意」と呼びます。

共同注意は、コミュニケーションの発達過程に重要な模倣や指差しと大きく関係しています。例えば、乳児が自発的に犬を指差し、その際に母親がその方向をみつめ、互いに指さしながら「犬だね」「ワンちゃんかわいいね」と声をかけると子どもはそれを模倣して言葉を発するようになり、言葉とともに概念を学び始めます。

2)就学までの言葉の発達について

言葉の獲得は、年齢とともに増えていき、他者の心を読み取り、お話ができるようになるのは5歳~6歳と言われています。また、話す言葉は少なくても他者の言うことを理解し、指示に従える場合は、まだ言葉が表には出てきておらず、ため込んでいる状態です。言葉を話すには、意味を理解していることが必要で50~70語を理解して初めて初語がでると考えられています。

以下に就学までに獲得する単語数と言葉の発達過程を紹介します。

・1歳:100語・1語文(「ワンワン」「マンマ」など)・喃語の発声
・2歳:300語・2語文(「ワンワン イタ」など)・「何?」「だれ?」などの質問・初歩的な会話ができる
・3歳:1,000語・3語文以上・自分が使いたい物を友達が持っているとき、「貸して」と言う
・4歳:1,500語・複文の使用・経験したことを他の子に話す
・5歳:2,500語・重複文の使用・わからない字があると大人に聞く
・6歳:単語3,000語・会話のルールを習得・ブランコなどの回数を数えて、順番を変わる

噛んでしまった時の対処方は?どうしたらうまく伝えられるの?

子どもがもし噛んでしまったら、まずはなぜ噛んだか子どもの気持ちを考えてあげましょう。そして、噛みついたところを見せて「ここ、とても痛いよ」と状況を説明したり、「おもちゃを取られて嫌だったね」と大人が言葉を使って気持ちを代弁します。そうすることで、子どもも自分の感情を言葉で伝えられるようになり、自然に噛む行為がなくなっていきます。

そして、言葉の発達には個人差があります。子どもは普段の生活のなかでたくさんの言葉を聞き取っています。うまく伝えられないからといって、無理に言葉を教え込む前に、大人がたくさん言葉かけをし、子どもとコミュニケーションを心がけることが大切です。

噛む行為は子どもにとって、コミュニケーション手段の一つです。
言葉の発達の過程を知ることで、子どもが何を伝えたいか見えてきます!

執筆者情報

執筆:株式会社東京リハビリテーションサービス 
作業療法士・公認心理師 竹中 佐江子

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