◆「逃げろ!」「不審者だ!」
2025年5月8日、東京都立川市立第三小学校で発生した不審者侵入事件。
~2人の男が授業中の教室に押し入り、教職員5名が負傷するという衝撃的な出来事が起こりました。児童に直接の身体的被害はなかったものの、多くの子どもが暴力行為を目撃し、教室から避難するという非日常を体験しました。~

「大丈夫だったの?」と声をかけても、いつもと様子が違う…。そんな変化を感じた保護者の方もいたかもしれません。
立川市では事件直後からスクールカウンセラーや市の心理士を派遣し、子どもたちの心のケアに取り組んでいます。しかし、トラウマの影響はすぐに現れるとは限りません。

子どもにも起こりうるPTSD(心的外傷後ストレス障害)

PTSDは、大きなショック体験のあとに心や体に現れる障害です。災害や事故、暴力、事件などがきっかけで起こり、子どもは大人よりも影響を受けやすいと言われています

◆ 子どもに見られる主な症状
再体験(フラッシュバック):出来事を何度も思い出してしまう
回避行動:学校や人、活動を避けるようになる
過覚醒:いつもビクビク、眠れない、集中できない
感情の麻痺:無表情になったり、感情が乏しくなる
退行行動:赤ちゃんのような甘え、夜泣きなど
攻撃的行動:友達や家族への暴力、破壊的な行動
身体的症状:お腹が痛い、頭が痛い、食欲がない
こうした変化は、子どもがうまく言葉にできない不安や恐怖のサインかもしれません。

保護者ができる心のケア

「うちの子、大丈夫だろうか?」そんなとき、私たち大人にできることがあります。

◎安心できる環境をつくる
普段通りの生活を守りながら、子どもが「安心できる場所」だと感じられるようにすることが大切です。
◎話を無理に引き出さない
「何があったの?」「怖かった?」と問い詰めるのではなく、子どもが話したくなったときに、しっかり耳を傾けてください。
◎気持ちに寄り添う
「怖かったよね」「びっくりしたよね」——ただ共感するだけで、子どもは救われます。
◎表現を手助けする
絵を描いたり、おままごとをしたり、遊びを通して気持ちを出すこともあります。
◎専門家に相談する
気になる様子が続いたり悪化する場合は、学校や専門の医療機関に相談してください。一人で抱え込まないことが、子どもを守る第一歩です。

◆心のケアは“目に見えない怪我”を癒す手当です◆
事件の記憶は、子どもたちの中で形を変えて残っていく可能性があります。だからこそ、大人がその変化に気づき、寄り添い、支えていくことがとても大切です。
「何もないように見える」その陰に子どもなりの戦いがあるかもしれません。私たち大人ができることを、今、はじめましょう。

執筆:八重樫 貴之 (作業療法士)
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