◆年長さんのAくん。元気いっぱいで友達ともよく遊ぶ子ですが、小学校に入って1か月、担任の先生から連絡帳に「授業中に席を立って歩き回ることが多いです」との一言。さらに、毎日のように体操服や連絡帳を忘れてしまう…。保育園の先生は「あんなにしっかりしてたのに…」と驚きます

実はこうした“ギャップ”は珍しくありません。これはいわゆる「小1プロブレム」の一例。小学校という新しい環境にうまく適応できず、子どもが落ち着かなくなったり、学級の雰囲気が不安定になったりする現象です。

小1プロブレムって何?どんな特徴があるの?

■入学直後の子どもたちに見られる「ちょっと困った行動」は、こんな傾向があります。

1. 席に座っていられない
•授業中に立ち歩く、話しかけてしまう、45分間集中が続かないなど。
2.  話を聞けない・指示が通らない
•先生の話を聞かずに私語をしたり、自分の好きなことにだけ没頭して切り替えられない。
3.  ルールや集団行動が苦手
•並べない、順番を守れない、グループ活動でトラブルが絶えない(ケンカ・暴言など)。
4.  自己管理がまだ不十分
•忘れ物が多い、トイレや着替えがひとりでできない、給食が食べられないなどの生活面。
5. 感情コントロールが難しい
•思い通りにいかないと泣いたり怒ったりする。些細なことでトラブルに発展しやすい。

入学前に保育園・幼稚園でできることは?

■「どうして急にこうなっちゃうの?」と思う前に、就学前にできる準備があります。日々の保育に少しずつ取り入れていける内容ばかりです。

1.  時間と生活リズムを身につける
・時計を見て行動する習慣づけ(「長い針が6になったらお片付け」など)、活動の区切りを自分で意識する練習を。
2. 「座る」経験を増やす
・お話を聞く時間を徐々に長くしたり、少人数の静かな活動で集中力を育てたりして、“座って聞く”力を自然に養います。
3.  指示理解と自己管理の力を伸ばす
・「上履きを持ってきて、それからトイレに行こうね」など、複数の指示を聞いて動く練習。持ち物の管理や着替えも自分で。
4. コミュニケーションと対人スキルを育てる
・けんかやトラブルの時、「やめてって言ってみよう」など、言葉で伝える力や順番を守るルール意識も少しずつ。
5. “小学校の雰囲気”に触れる機会を作る
・「学校ごっこ」や小学校との交流見学を通じて机に向かって話を聞くスタイルに慣れていきましょう。
6. 保護者と一緒に歩む就学準備
•「小学校は“集団で動く”場所」と伝え、不安な保護者には見守り方や家庭での接しを一緒に考える機会を。

◆「小1プロブレム」の背景には、発達特性や家庭環境の違い、不安の強さなど様々な要因があります。就学前に“少しずつ慣れる・経験する”だけでも大きな変化が生まれます。保育園・幼稚園での準備と小学校への丁寧な引き継ぎ。そして何より、大人たちが“子どもが変わる”のではなく、“育ちを支える”意識を持つこと。それが、入学後のつまずきを減らし、子どもたちの健やかなスタートを後押しします。◆

執筆:八重樫 貴之 (作業療法士)
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