◇ はじめに 
2024年1月1日に能登半島地震、それに伴う津波、火災などが発生いたしました。まずは、亡くなられた方とそのご遺族の皆さまにこころよりお悔やみを申し上げるとともに、被害にあわれた方々には、こころからのお見舞い申し上げます。災害の影響は、被災された方の生活だけでなく、心にも深刻な傷を残すことがあります。被災した多くの大人達と同様に、子ども達の身体や気持ちにも変化が現れることがあります。子ども達は大人よりも言葉で感情を表現しにくいため、感情を抱え込みやすいのです。保護者や保育者は子ども達が感情を表現しやすいように、対話を通じて子ども達の気持ちに耳を傾けることが大切です。ここでは、子ども達が安心して過ごせるようになるための関わり方についてお伝えしていきます。

1.災害が心と身体に与える影響

災害によって、子どもや大人は心と身体に大きなストレスを溜め、心と身体のバランスを崩すことがあります。これまでの日常生活では感じたことのないような気分や身体の変調を来たします。これらの反応は、災害を体験した多くの人々が示すものであり、以下のように現れます。

[具体的な反応]
・けいれん ・めまい ・アレルギー反応 ・吐き気 ・睡眠障害 ・悪夢
・緊張 ・一人ぼっちになる不安 ・物忘れ ・家族に対する心配 ・けがをする
・架橋や高速道路を避ける ・涙もろい ・普段よりも速く話す ・無関心 ・不安傾向
・集中力に欠ける ・動き回る ・怒りっぽい ・いらいらする
・突然の騒音や振動による驚き ・恐れていることが起こりそうだと考える
・援助されていないと感じる ・生き残っていることに罪の意識を覚える
・初期の災害体験が繰り返し頭に浮かんでくる

これらの反応は、災害後2~4週間、災害を思い起こさせるものがそばにあるときは半年以上も続く場合があります。 もしご自身や子どもにこれらの兆候が見られる場合、それは災害を体験した人々が示す一般的で自然な反応です。大人でもとても不安になる中で、子ども達はもっと不安に感じていることもあります。
“このような大きな災害を体験したならこうした反応が誰に起きても不思議なことではない”ということを分かりやすく話してあげましょう。

2.保護者、保育者へのアドバイス

子ども達が安心して過ごせるようになるために、保護者や保育者は以下のことが行えると良いでしょう。

  • 家族が一緒にいる時間を多く持つように心がけましょう。
  • 子ども達は保護者の温かい「行動」と「言葉」によって、以前のような状態に戻っていく必要があるため、言語的なコミュニケーションやスキンシップの大切さを確認しましょう。
  • 子ども達が感じる恐れについて話を聴きましょう。 この場合、無理に聞き出す必要はありません。まずは寄り添い、安心感を与えましょう。
  • 災害について聞かれた時には、できるだけ災害について知っている事実を子ども達に説明し、 そのことに対する子ども達の気持ちを聴き、安心感を与えましょう。
  • どんな些細なことでも、可能な限り「普段の習慣」を保ちましょう。食事、歯磨き、着替え、睡眠時間を普段通りに保つことは、子ども達を安心させる大きな手助けになります。

3.子ども特有の反応

以前には1人でできていたことができなくなったり、保護者に甘えたりすることがあります。これらは「退行」と呼ばれる現象です。保護者や保育者の方が最も気がつきやすく、戸惑う様子のひとつです。以下は、子ども達が示す可能性のある反応の一例です。

[具体的な反応]
・おもらし(夜尿、失禁) ・おしゃぶり(指しゃぶり、爪かみ)
・保護者へのべたつき(だっこ、おんぶ、まとわりつき)
・欲張りな態度(与えられたものを大切にしない、必要以上に欲しがる)  
・聞きわけのなさ(拒否的、反抗的な態度、約束を守らない)
・粗暴な言動(乱暴な言葉、ものを壊す)  ・保育園、幼稚園に行きたがらない
・地震や避難の絵を描いたり、人や町が被災した場面の「ごっこ遊び」をする

4.専門の援助が必要なとき

子ども達の問題が深刻で、以下の症状などが出現している場合は、専門家への相談をご検討ください。また、保護者・保育者の方もお辛い状況で子どものケアが難しい場合もご利用いただけたらと思います。

・睡眠の問題(眠れない、悪夢など)が2~3週間も続いている
・べたつき(だっこ、おんぶ、まとわりつき)が少なくならない
・恐れや不安がさらにひどくなる
・3.に記載してある言動が数週間続いている

専門家へのご相談をご希望の場合、こちらもご参考くださいませ。(外部)
被災者に対するこころのケア(被災者やその家族、支援者などの方へ)|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト (mhlw.go.jp) (厚生労働省)

制作:アイエムエフ株式会社

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