◇ はじめに 
この度の能登半島を震源とする大規模な地震において犠牲になられた方々とご遺族の皆さまに謹んで深く哀悼の意を表するとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。被災された地域ではその後も地震活動が続き、また冬の寒さや風雪の時期のなかで多くの方が不自由な生活を強いられておられることに胸を痛めております。まずはお体を最優先にお過ごしくださることを切に願っております。

1.ストレスマネジメントが必要な理由

現在、このような状況の中でも保育士の皆さまは園児や保護者を迎え入れ、子ども達が安心して過ごせるように関わっておられます。その中には、おもらしをしたり、聞きわけが悪くなったりなど、以前とは異なる行動を示している園児もいるかもしれません。子ども達が大好きで、仕事に誇りを持ちながら勤めておられたとしてもこのような状況ではストレスを感じやすくなるのは当然のことです。
ここで、少しワークをしてみたいと思いますのでご一緒にお願いします。まず、両こぶしをぎゅっと力を入れてみましょう。手のひらに爪の跡が残るぐらいの強さで15秒間握ってください。それではこぶしをゆっくりと解いていきましょう。
たった15秒ですがこぶしだけでなく身体も力が入り硬くなっていたのではないでしょうか。そしてこぶしを解いたときは緊張がほぐれたことを感じられたのではないでしょうか。大きな地震が起き、いつ余震が起きるのだろうかと先ほどのこぶしのように皆さんの身体は身構えて絶えず緊張しているかもしれません。この状態が続くと身体や心などに不調が生じやすくなってしまいます。それを防ぐためにストレスマネジメントが必要となります。まず自分で簡単にできる方法をご紹介いたしますので、是非取り入れてみてください。

2.セルフ・タッピング

  1. 椅子に座ります。両腕をぶらぶらして心身をほぐします。
  2. 両手を一度しっかりと開き、力を抜きます。手の形が自然と丸くなります。
  3. その手の形のまま、指先のお腹の部分を使って軽く弾むように左右交互に優しく身体の部分をたたいていきます。これを「タッピング」と言います。以下ではタッピングはすべて左右交互に行います。
  4. タッピングをする長さは一か所につき30秒ぐらいを目安にしましょう。
  5. 早くストレスを和らげたいと長時間たたいたり、強くたたきすぎると逆効果です。軽やかに自分を大切にするような感覚でタッピングします。
  6. まず顎を左右交互にタッピングしましょう。あくびが出るかもしれませんが、心身がほぐれてきているサインです。続いて頬もタッピングしましょう。
  7. 次にこめかみをタッピングします。目や頭の疲れ、頭痛に効果のあるポイントです。
  8. 次は額です。眉毛の中央から少し上がったところをタッピングします。
  9. 頭全体をほどよい感じでタッピングしましょう。気持ちよい箇所はありましたか?
  10. 次は頭の後ろ側です。髪の毛の生え際に沿って左右にタッピングします。
  11. 首と肩もタッピングします。
  12. 次は胸です。鎖骨の下のくぼみの辺りをタッピングします。そして胸全体もタッピングしていきましょう。
  13. 胸から下腹まで徐々に下がりながらタッピングします。腰もタッピングしましょう。
  14. すべてが終わったら両手を重ねて下腹において静かに呼吸を整えましょう。最後にお腹を丸くさすりながらリフレッシュをして終わりましょう。 (出典:中川一郎著 『タッピングタッチ基本と被災者ケアのための小冊子』一部表記変更)
  15. いかがでしたか?1回目で効果を感じた方もおられるかもしれませんし、よくわからなかったという方もおられるかもしれませんが、休憩時間や仕事が終わった後など継続してタッピングをしてみてください。職場の皆さんと一緒にしてみるのもいいですね。

3.ちょっと足しセルフケア

被災地域においては様々な住居の状態の方がおられます。ご自宅で生活が可能な方や避難所、あるいは自宅を離れて生活をしておられるなど様々です。よって毎日入浴することが難しいかもしれませんが、入浴は緊張をほぐしてくれます。もし可能であれば入浴剤も使ってみましょう。香りがさらに緊張した身体と心を緩めてくれます。また、睡眠もセルフケアとして重要です。睡眠時間が6時間台という方が多いかもしれませんが、30分でも構いませんので早めに休みましょう。

4.園長や管理職によるケア

ケアは保育士皆さんの一人ひとりのセルフケアだけに止まらず、園としても取り組むことが重要です。
園長や管理職の先生方は職員皆さんの言動や気分、行動面の変化に心配りをしてください。“何かいつもとは違うな”と感じた際には適宜声をかけることが大切です。しかし、周囲にたくさんの人がいる状況では安心して話すことは難しいかもしれません。さりげない配慮をしながら職員の皆さんが安心して働ける職場環境を整えていきましょう。職員の皆さんの安心感こそが子ども達の安心感に繋がります。

5.おわりに

大地震というトラウマティックな体験をされた園児や保護者と日々接することは皆さんの心にも負担になり、イライラしたり、自信がなくなったり、人と関わりたくなくなるかもしれません。しかしそれは能力や適性の問題ではありません。そのような際には休息や気分転換が必要です。
また、不調が1か月程度続くようであれば一人で抱えず専門的な相談を利用なさってください。日々のストレスマネジメントが緊張緩和、心身の不調改善に役立つことを願うとともに、一日も早く復旧が速やかに進むことを心から願っております。

制作:アイエムエフ株式会社

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