令和7年8月7日に国土交通省より「事業者間遠隔点呼を実施する自動車運送事業者における輸送の安全に関する業務の管理の受委託について」の通達が出され、この中に事業者間遠隔点呼」における受委託の要件等に関する事項が盛り込まれています。
そこで今回は、その主な内容についてご紹介します。
1.事業者間遠隔点呼とは
他の事業者との間で行う遠隔点呼を「事業者間遠隔点呼」といいます。例えば、A運送会社の運行管理者がB運送会社の運転者に対して遠隔点呼を行うような場合です。遠隔点呼を行う他の事業者については、資本関係がない場合でも認められ、完全子会社も他の事業者に含まれます。
事業者間遠隔点呼を行う場合は、貨物自動車運送事業法第29条第1項に基づき、事業者と他の事業者との間において、あらかじめ国土交通大臣の許可を受けている必要があります。

2.受委託の要件
(1)委託事業者および受託事業者
委託事業者および受託事業者は、一般旅客自動車運送事業者または一般貨物自動車運送事業者等もしくは特定第二種貨物利用運送事業者であり、かつ、点呼告示第5条の機能の要件を満たす遠隔点呼機器を有する自動車運送事業者である必要があります。
また、受託事業者は委託事業者と同一の事業および種別であることとし、受委託の許可は営業所単位で行うこととになります。
2)受委託に係る条件
受委託に係る主な条件は、次のとおりです。
① 委託事業者および受託事業者は、点呼告示で規定される事項を順守すること。
② 委託事業者および受託事業者は、事業者間遠隔点呼に係る業務の管理の委託受託契約書等について、事前に協議の上で定めること。
③ 事業者間遠隔点呼に係る業務の管理の委託受託契約書等に取り決めがない事象が生じた場合又は委託される業務内容に変更が生じた場合においては、委託事業者および受託事業者間において協議の上、対応を決定すること。
④ 委託事業者および受託事業者は、事業者間遠隔点呼を受ける運転者等に係る個人情報の取り扱いについて双方で同意を得るこ
3.行政上の責任
事業者間遠隔点呼の実施違反等の違反行為に対する行政処分は、個別具体的な事例に応じ、受託営業所又は委託営業所を対象とします。
具体的には、次の例のとおりです。
① 事業者間遠隔点呼を行うべき運行管理者等が正当な理由なく事業者間遠隔点呼を実施しなかった場合、点呼の実施記録に係る記載事項の不備があった場合などは、受託営業所が行政処分の対象となります。
② 事業者間遠隔点呼を受けるべき運転者等が事業者間遠隔点呼を受けずに運行した場合、委託営業所が点呼告示又は通達で定められた書類又は情報等を提出しないなどの場合は、委託営業所が行政処分の対象となります。 なお、事業者間遠隔点呼について、受託営業所の責任が問われる場合にあっても、受託営業所において事業者間遠隔点呼に係る違反が一定期間行われていたと認められるときには、許可条件違反とする余地があり得ることに留意する必要があります。
※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます。
執筆者情報
記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社