令和7年6月11日、トラック運送事業の許可について5年ごとの更新制導入等を盛り込んだ改正貨物自動車運送事業法と、それを担保するために新設された「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」が公布されました。
そこで今回は、貨物自動車運送事業法の主な改正内容をご紹介します。

1 事業許可の更新制度の導入

 貨物自動車運送事業の許可については、現行では、一度許可を受ければ年数制限なしに継続されてきましたが、本改正により、5年ごとの更新制が導入され、更新を受けなければ事業を継続することはできなくなります。
 なお、今回の改正では、運送事業の許可基準として、新たに「第15条第1項の基準及び第25条第1項の基準を遵守してその事業を遂行することその他法令の規定を遵守してその事業を遂行することが見込まれること」が追加されました。それだけ許可基準が厳しくなったということです。許可基準を満たしていないと判断されれば更新はできませんから、早めに現状の管理状況等をチェックするなどして適正な対応をとることが求められます。

<第15条(輸送の安全)第1項の基準>
一. 事業用自動車の数、荷役その他の事業用自動車の運転に附帯する作業の状況等に応じて必要となる員数の運転者及びその他の従業員の確保、事業用自動車の運転者がその休憩又は睡眠のために利用することができる施設の整備及び管理、事業用自動車の運転者の適切な勤務時間及び乗務時間の設定その他事業用自動車の運転者の過労運転を防止するために必要な事項
二. 事業用自動車の定期的な点検及び整備その他事業用自動車の安全性を確保するために必要な事項

<第25条(事業の的確な遂行)第1項の基準>
一. 事業用自動車を保管することができる自動車車庫の整備及び管理に関する事項
二. 健康保険法等の定めるところにより納付義務を負う保険料等の納付、適正原価を下回らない額での貨物の運送の受託及び委託、労働者の適切な処遇の確保その他の事業の適正な運営に関する事項
三. 前二号に掲げるもののほか、輸送の安全に係る事項以外の事項であってその事業を適確に遂行するために必要なもの

2 「適正原価」を下回る運賃及び料金の制限

貨物自動車運送事業に係る運賃及び料金については、現行では、国土交通大臣が告示で定める標準運賃・料金が適用されてきましたが、改正により、標準運賃・料金は廃止され、新たに適正原価が適用されることになります。
 適正原価は、国土交通大臣が定め、告示されます。一般貨物自動車運送事業者は、適正原価の告示があった場合においては、自らが引き受ける貨物の運送に係る運賃及び料金が当該適正原価を下回ることとならないようにしなければなりません。

3 2つ以上の段階にわたる委託の制限

一般貨物自動車運送事業者は、真荷主から引き受けた貨物の運送について他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用するときは、当該貨物の運送について当該他の貨物自動車運送事業者からの2つ以上の段階にわたる委託を制限するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととされました。
※真荷主とは、自らの事業に関して貨物自動車運送事業者との間で運送契約を締結して貨物の運送を委託する者であって、貨物自動車運送事業者以外のものをいいます。

改正貨物運送事業法の施行は、一部を除いて公布の日から3年以内とされています。

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記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社

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