このほど、「健康起因事故防止マニュアル」(公益社団法人全日本トラック協会発行)が改訂されました。今回は、その背景や主な改訂点などをご紹介します。

◆改訂の背景

 厚生労働省が公表した「過労死等の労災補償状況(令和5年)」によると、脳・心臓疾患の支給決定件数で最も多い職種(中分類)は、自動車運転従事者です(右表参照)。また、国土交通省が公表している「自動車運送事業における健康起因事故発生状況の推移」をみると、自動車運送事業全体では減少傾向がみられるものの、トラック運送事業については増加傾向がみられます(右図参照) 。
 こうした状況を踏まえ、特にトラック運送事業においては過労死等の防止や健康起因事故防止が重要な課題となっていることから、「健康起因事故防止マニュアル」の見直しと改訂が行われました。

主な改訂点

 本マニュアルの主な改訂点は、新たに「トラック運送事業者に特化した健康管理の手法」として、「運輸ヘルスケアナビシステム」、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」、「働く高齢者と女性の健康管理」などがまとめ直され、内容も追加されたことです。
 特に、運輸ヘルスケアナビシステムは、事業者の健康管理を支援するシステムとして、その内容がかなり詳しく紹介されています。

「健康起因事故防止マニュアル(令和6年改訂版)」は、公益社団法人 全日本トラック協会のホームページからダウンロードできます。

健康診断の確実な実施

 健康起因事故を防止するためには、改善基準告示を遵守するとともに、日常の健康管理をしっかりと行うことが不可欠です。そのためには、健康診断を実施し、その結果を正しく把握することが基本です。
 事業者の皆様には、1年に1回(深夜の業務を含む場合は、6か月以内に1回)の健康診断の実施が義務づけられています。健康診断の未受診者が生じないような実施計画を立てるとともに、運転者の皆さんには健康診断を受けることが健康管理の基本であり、法令でも受診が義務づけられていることをしっかりと理解してもらい、必ず受診するよう指導することが求められます。

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記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社

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