2024年7月30日に厚生労働省より「自動車運転者を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況」が公表されました。
当ニュースでは、その中からトラック運送事業者に対して実施された監督指導・送検等の状況を中心にご紹介します。
◆労働基準関係法令違反
○令和5年に全国の労働基準監督署等において、労働基準関係法令違反が疑われる自動車運転者を使用する3,711の事業場に対して監督指導が実施され、3,049事業場(82.2%)で法令違反が認められました。
○トラック運送事業者については、2,928事業場において監督指導が実施され、2,389事業場(81.6%)で法令違反が認められました。主な違反事項は、次のとおりです。
①労働時間(1,405事業場 48.0%)
②割増賃金の支払い(569事業場 19.4%)
③労働時間の状況の把握(191事業場 6.5%)
◆「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下、改善基準告示)違反
○トラック運送事業者における改善基準告示違反が認められたのは、1,706事業場(58.3%)でした。
○改善基準告示の違反事項については、「最大拘束時間」が1,269事業場(43.3%)で最も多く、次いで「総拘束時間」が 979事業場(33.4%)、休息期間が 952事業場(32.5%)となっています。
◆送検状況
○令和5年に全国の労働基準監督署等において、自動車運転者に関する重大・悪質な労働基準関係法令違反が認められた事案として送検された件数は54件でした。トラック運送事業者で送検されたのは45件(83.3%)で、全体の8割を超えています。
※ここでいう「送検」とは、厚生労働省による指導にもかかわらず法令違反を繰り返す重大・悪質な事案については、刑事事件としてに送検されることをいいます。送検されると、検察庁が起訴するかどうかを判断し、起訴されれば裁判が行われ、有罪になると刑事処罰を受けます。
○送検に係る違反事項については、全体では「労働時間」が13件(24.1%)で最も多く、次いで「安全基準」が12件、「最低賃金の効力」が10件となっています。
○トラック運送事業者だけに限った違反事項件数については公表されていませんが、トラック運送事業者の送検件数が全体の8割以上を占めていることから、ほぼ全体の傾向と同じと考えられます。
◆法令違反とならないためのアドバイス
万一、法令違反により送検される事態となれば、経営に重大な支障をきたします。事業者の皆さまには、最新の法令等を常に把握し、事業場における労働基準法や改善基準告示等の遵守状況を継続的に確認していくことが求められます。
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執筆者情報
記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社