事例

夫のXさんが亡くなられ、妻のAさんがご相談にいらっしゃいました。AさんとXさんは再婚同士で、Aさんには、前夫との間に子Bさん、Cさんがおり、お二人ともXさんとは養子縁組をしています。
Aさんとの再婚時に、Xさんは「自分は過去に3回結婚しているが、自分の子供はいない」と言っていたとか。Xさんの出生から死亡までの戸籍を集めていく中で、たしかに、XさんはAさんの前に3名との婚姻関係にありましたが、いずれも期間は1年未満で「子の出生」の記載はないようです。
ところが、戸籍を取り進むうちに、Aさんの認識とは異なる事実が判明しました。それは、Xさんが2番目の結婚相手・Yさんの連れ子であるDさん、Eさんと養子縁組をしており、さらに、Yさんとの離婚の際にこの養子縁組を解消しないままだったということです。離婚すれば親子関係も一緒に解消されると思われがちですが、本来は別途「養子離縁」もしなければ解消できません。

結果

結局、Xさんの相続人は、現在の奥さんであるAさん、その連れ子でXさんと養子縁組をしているBさんとCさん、そして過去の養子縁組後、離縁しそびれてしまった前妻Yさんの連れ子Dさん、Eさん、全部で5名となることがわかりました。Aさんとしては親子間での相続手続で済むとお考えだったものが、いきなり会ったこともないDさん、Eさんと、ご自宅を含む財産について遺産分割協議をしなければならなくなり、かなりショックを受けていらっしゃいました。
最終的にはいわゆるハンコ代という範囲でお二方に現金を渡すことで協議はまとまりましたが、複雑な間柄の方と連絡を取り協力をお願いすることは、Aさんにとって大変ご心労のかかることでした。
Aさんは結婚する際に、Xさんの現在戸籍は確認されたそうですが、それだけでは、子(推定相続人)がいるかはわかりません。かといって、過去の戸籍を全部確認される方はそうそういないでしょう。離婚、再婚をされている方は、ご自身の思い込みに頼らず、推定相続人についてきちんと確認しておくことも終活の一環として大切です。

●養子縁組の種類

実子ではない者との間で、実子と同じような親子関係を結ぶ手続きのことです。これによって子となった者を養子、親となった者を養親といいます。養子制度には、縁組後も実親との親子関係が存続する「普通養子縁組」と、縁組により実親との関係が終了する「特別養子縁組」の2つがあります。

●養子縁組の注意点

「普通養子縁組」は、市区町村の役所に届け出ることにより成立しますが、養子が未成年者である場合は家庭裁判所の許可が必要となります。ただし、その養子が自分または配偶者の直系卑属(配偶者の連れ子など)の場合は、許可は不要です。一方、「特別養子縁組」は、子の利益のために特に必要がある場合に限り、家庭裁判所の手続により成立し、原則として離縁することはできません。
また、離婚して未成年の子がいる人が再婚した場合、その連れ子と再婚相手との間には当然に親子関係が生じることはないため、再婚した相手の子とするには連れ子と養子縁組をする必要があります。そして、同様に養子との親子関係を解消するには「離縁」をする必要があります。夫婦が離婚したからといって、当然に連れ子と離縁したことにはなりませんので、注意が必要です。

養子縁組の相続

相続については、養子は実子と同じく養親が死亡したときは、養親の相続人になり、「普通養子縁組」の場合は、実親との間の親子関係も存続するため、養子に出た子は実親の相続人にもなります。今回のケースで言えば、DさんとEさんはXさんの相続人となりますし、またそれぞれの実父の相続人にもなり、BさんCさんもXさんの相続人となることはもちろん、Aさんの前夫である実父の相続人になる…ということになります。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会

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