事例
Nさんから、お父様が亡くなったとご相談をいただきました。お父様は、もしもの際に、離れて暮らすNさんが困らないようにとエンディングノートを作成しており、財産の把握はスムーズに進みました。相続財産は預貯金数行と生命保険2契約でした。相続人はNさんお一人です。金融機関と保険会社に相続手続に必要な書類を提出し、このまま滞りなく手続きが終わるはずでした。
ところが、2契約の生命保険のうち、1社から「Nさんの名字のフリガナが違うので手続きができない」との連絡が来たのです。Nさんのフリガナは「ナカタ」ですが、生命保険の契約では「ナカダ」とのフリガナになっていたようです。
結果
なぜそうなったのかを保険会社から聞かれたものの、お父様が契約した当時の事は分からないし、そもそも自分のフリガナを間違える事もないので聞かれても困るばかりでした。手続きを進めるため、保険会社から「フリガナの入った公的証明を提出して下さい」と言われたのですが、戸籍や印鑑証明にはフリガナがなく、Nさんの住民票にもフリガナの記載はありません。
仕方がないのでその旨を説明し、保険会社に代わりの手続きを検討してもらい何とか手続きを進めてもらいましたが、通常の手続きの倍以上の時間がかかりました。なぜフリガナが違っていたのか。真相は分かりません。もしかしたら保険加入時にフリガナを書き忘れ、保険会社の担当者が補記したフリガナが違っていたのかもしれません。
もし、申込時点できちんとフリガナを書いていれば、もしくは、保険証券が届いた時点で内容を確認して修正をしていればこのような事は起きなかったでしょう。フリガナ等のほんの些細な違いでも、相続手続時には今回のような大きな手間やストレスが生じる可能性があるので注意が必要です。

戸籍にフリガナが記載されます
●戸籍法の一部改正
令和5年6月、戸籍法の一部改正を含む「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」(「改正法」)が成立し、公布されました。これまで氏名の振り仮名は戸籍に記載されていませんでしたが、この改正法が施行されると、新たに氏名の振り仮名が戸籍に記載されることとなります。改正法は令和7年5月26日に施行されました。
振り仮名が住民票の写しやマイナンバーカードにも記載されると、本人確認資料として用いることができるようになるほか、複数の振り仮名で別人を装うなど各種規制の潜脱行為の防止にもつながるとされています。
●振り仮名が記載されるまでの流れ
戸籍への振り仮名記載は次の手順で行われます。具体的には、住民票において市区町村が事務処理の用に供するため、便宜上保有する情報等を参考に通知されるとされています。
①本籍地の市区町村長から各人に戸籍に記載される予定の氏名の振り仮名が通知される
※この通知は、改正法の施行日(令和7年5月26日)から遅滞なく送付することとされています。
②送付されたら必ず、振り仮名が正しく記載されているかを確認する
※通知に記載された振り仮名が間違っていた場合、施行日後1年以内に届出を行う必要があります。万が一、届出をせずに放っておくと、一年後、誤った振り仮名がそのまま戸籍に記載されてしまうので、注意が必要です。
なお、正しく記載されている場合は、届け出は不要です。また、誤った振り仮名についての届出は、書面のほか、マイナポータルでも行えるとのことです。
執筆者情報
事例発行元:相続手続支援センター事例研究会