民法の改正に伴って、労働者の賃金請求権の消滅時効が「当面の間」は「3年」とする改正労働基準法が、2020年4月1日から施行されました。

 

賃金請求権とは?

賃金請求権と消滅時効

賃金請求権とは、労働者が、金銭(賃金、残業代)を使用者に請求する権利のことで、この権利の消滅時効が2年から3年へ変更になりました。つまり、今まで未払い残業等があった場合、2年前まで遡って請求できていたことが、2020年4月以降に支払われる賃金からは、3年前まで遡れることになりました。

考えられるリスク

①割増賃金を支払っていない場合

例)始業8時 終業17時 休憩1時間1日8時間労働 休日は日曜日のみ日給15,000円。

この場合、月曜日から金曜日働いたことで1日8時間×5日=40時間そのため土曜日は時間外労働となるため、割増賃金の支払いが必要になります。本来、土曜日は15,000円×1.25(割増率)=18,750円の支払いが必要。ということは1日あたり3,750円が足りないということになります。
1年間は52週だとすると、3,750円×52週=195,000円。195,000円×3年間=585,000円の支払いが必要です。もし、5人の作業員を抱えているとすれば、5倍となりますので、2,925,000円になります。

②未払い残業代があった場合

上記と同じ労働条件で、実際に現場は17時に終了したとしても、その後事務所に戻り、日報の作成や翌日の準備をし、帰りが毎日20時だとした場合、毎日3時間の残業をしているということになります。

15,000円÷8時間=1,875円(時間単価) 1,875円×1.25(割増率)×3時間≒7,031円
未払い残業代1ケ月25日稼働したとすると 7,031×25日×12ケ月×3年=6,327,900円といった金額が請求されることになります。

今やらなくてはいけないこと

もし、未だ時間管理をしていない、残業代を支払っていないという事業主の方がいたら、1日も早く適正な対策とりましょう!!

①適正な時間管理建設業の場合、出面表の管理で時間管理をしていないケースを未だよくみます。これでは1日何時間働いているのかがわかりません。始業と終業の時刻をしっかりと記録し、どこまでが労働時間かを明確にすることが大切です。
②賃金の見直し現在の日給が残業代を含んだ日給だというのであれば、日給の中には何時間分の残業が入っているのか内訳の明示が必要です。
③適正な残業代および割増賃金を支払うこと

ポイント!

労務リスクを減らすということと同時に、労働環境を整えて定着率のよい会社にしていくことが重要です!!

執筆者情報

記事の作成・編集:アスミル社会保険労務士事務所

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