大手住宅メーカー6社(※)の2019年度の中間決算が出揃いました。今回はこの決算データにて開示されている各社の戸建・アパートそれぞれの実績をもとに、2019年度上半期の動向を振り返るとともに、今後の見通しについても解説します。(※積水ハウス・大和ハウス・積水化学工業・ミサワホーム・住友林業・旭化成ホームズ。積水ハウスは1月決算、その他は3月決算)

1.上半期実績、「駆け込み」で販売堅調も「反動減」で受注苦戦

まずは上半期の実績です。各社の主力である戸建(請負+分譲)の販売・受注実績から見ていきましょう。

販売件数は、開示5社(ミサワホームを除く)のうち前年比プラスが2社・マイナスが3社と、前年割れが過半数を占める結果となりました。ただし、マイナス組は▲1%未満の微減が目立つ一方で、プラス組では2ケタ増も見られます。消費増税を控えた駆け込みの動きを反映し、販売に関しては決して悪くなかったと言えそうです。一方で、戸建の受注件数は開示5社(積水化学工業を除く)すべてマイナスとなり、マイナス幅も▲5%~▲14%と、非常に厳しい結果となりました。苦戦の大きな要因としては、消費増税に伴う駆け込みの反動減が挙げられるでしょう。しかし、比較対象となる昨年上半期の時点で駆け込みがまだ少なかった点や、上半期実績と駆け込み時期が重なる積水ハウス(1月決算のため上半期は2~7月)もマイナスである点を考慮すると、「反動減」だけが理由とは言えません。

 根本的な要因は、ここ数年続いている住宅市場そのものの停滞・お客様の検討長期化にあると言えるでしょう。アパートは戸建て以上に厳しい結果で、販売・受注とも5社中4社がマイナス、2ケタ減も目立っています。都市部がメインである旭化成ホームズが唯一のプラスとなったものの、地方圏を中心としたローン厳格化・空室問題報道などの影響を受け、2~3年ほど前までの活況から一転、各社とも大幅に実績を落としています。

2.通期予測、反動減・市場低迷の影響色濃く、悲観的な予測目立つ

今度は、各社の’19年度通期の業績予想を、戸建から見ていきましょう。

販売件数は、開示4社(積水ハウス・ミサワホーム除く)のうち、プラス予測2社・マイナス予測2社となっています。上期の販売実績を踏まえ、比較的前向きな予測も目立ちます。一方で受注件数は、厳しい予測が並んでいます。開示3社(積水ハウス・積水化学工業・ミサワホーム除く)すべて、▲5~10%程度のマイナスを予測しており、上半期よりマイナス幅が拡大すると予測するメーカーもあります。昨年下半期が駆け込みのピークであることから、下半期も前年度を大きく上回ることは難しく、苦戦が避けられないと睨んでいるようです。アパートに関しても、上半期の市況を踏まえ、販売は開示4社のうち2社が前年比プラスを見込むものの、受注は開示3社すべてがマイナス予測となっています。

3.厳しい戦いは避けられない下半期。各種支援制度の有効活用で集客・商談の確保を

実際、足元の受注についても厳しいデータが並びます。メーカー各社が発表した10月の受注速報は軒並み前年割れで、2ケタ減も目立っています。受注の源泉となる集客についても「4月以降は減少した」との声が多く、商談数そのものが減少しているという状況です。駆け込みの反動減に加え、10月1日の消費増税によって潜在顧客層の住宅購入マインド低下も懸念されます。大手各社の予測通り、この半年間は厳しい戦いを強いられることになりそうです。

 その一方で、増税対策として掲げられている「住宅ローン控除拡充」「贈与税非課税枠の拡充」「次世代住宅ポイント」は、〆切が近づきつつあり、この下半期の大きなプラス材料となります。一般消費者・潜在検討層などにおける各種支援制度の認知度はまだまだ低いため、これらの制度を上手に訴求することで、住宅購入マインドの上昇を促すことは十分に可能です。接客・商談段階における丁寧な説明はもちろんのこと、ホームページ・紙広告などにおいてもこれらの制度を上手に訴求し、「いま建てるメリット」を伝えていくことが、厳しい市場環境を勝ち抜くためのポイントとなるでしょう。

執筆者情報

資料作成:株式会社 住宅産業研究所

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