名古屋高速道路でのバス事故

 去る8月22日、名古屋市の高速道路で高速バスが分離帯に衝突、横転して炎上、2人が死亡し7人の乗客がケガをする事故が発生しました。後続車のレコーダーには、少なくとも数百メートル手前から、バスが追い越し車線を走行中に左に寄って白線を踏むなどふらつく様子が記録されていました。運転手は亡くなっており正確な原因は分かりませんが、事故前の挙動からは、運転手の健康状態の悪化が事故の原因とみられています。
 バスなどの道路運送事業者では、運転手が運転中に疾病などが原因で発生する事故が増加しており、国土交通省では運転手の健康管理マニュアルや、脳血管疾患の対策ガイドライン、突然の意識障害の原因となる睡眠時無呼吸症候群(SAS)の対策マニュアルなどを策定し、「健康起因事故」の防止に向けた対策を示しています。
 デイサービスの送迎中の事故でも、運転手が意識を失って電柱に衝突し乗車していた利用者が負傷するなど、運転手の健康起因事故が急増しています。介護事業者でも、バスやタクシー事業者と同様の対策が求められています。

送迎業務時に送迎車ドライバーの健康チェックを

高齢ドライバーの健康管理問題

バスの運転手が持病の発作で意識を失い、バスが転落するなどして大事故が多発し、運送業界では高齢ドライバーの健康管理が大きな経営課題になっています。デイサービスの送迎業務を担うドライバーも高齢者が多く、事例のような自動車事故が発生しています。デイサービスも運送業界同様に、健康管理に起因する事故を防ぐために、ドライバーの健康管理を徹底しなければなりません。

 平成30年6月に国土交通省は、バスドライバーの相次ぐ「健康起因事故」の防止に向けて、運送業界に対して「健康起因事故の防止に向けた健康管理の実施について」という通達を出しました。この中で、健康起因事故の原因となった疾病は、心疾患・脳疾患・睡眠時無呼吸症候群であり、これらの持病を持つドライバーの健康管理について徹底を指示しています。

健康起因事故防止のための対策とは

雇用している事業者が行うべき、ドライバーの健康管理は大きく分けて2種類あります。定期健康診断の受診徹底と、業務開始時の健康チェックです。まず。ドライバーに定期健康診断を受診してもらい、運転業務の支障がないことを確認しなければなりません。そしてもっと重要なのは業務開始時に健康チェック表を使用して、脳疾患や心疾患の症状がないかドライバーごとにチェックすることです。
 何の前触れもなく突然起こる脳血管障害の発作などによる健康起因事故は、防ぐことが難しいかもしれません。しかし、多くの場合、健康状態の悪化の前には、血圧の上昇やめまい・ふらつきなど危険な予兆が見られることが多く、運行業務開始前には必ずチェックが必要です。多くのデイサービスでは看護師が常駐していますから、持病のある運転手に対しては看護師によるチェックも有効です。

このように「利用者を送迎車から降ろし忘れない対策」「降ろし忘れミスにすぐに気づく対策」「降ろし忘れ長時間放置した時の救命の対策」の3つに分けて何重にも対策を講じてください。

送迎車ドライバー健康チェック表の見本を提供しています(ニュースに添付)。

執筆者情報

監修 株式会社安全な介護 山田 滋 

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