事例紹介

5歳のA君はいつもニコニコ、先生とお話するのがとても大好きな元気な男の子です。
ある日、保育園では春の運動会に向けてお遊戯の練習をしていました。園庭では、他の組の子どもたちも踊りの練習していました。周りが騒がしい為、先生はその日の練習の流れを大きな声で子どもたちに説明していました。お友達と一緒に整列していたA君も、先生が踊っている姿を見ながら音楽に合わせて踊りはじめました。ところが、A君は上手に踊ることができず、先生やお友達に注意ばかりされていました。すると先生が目を離した隙に、A君は部屋に入って一人で遊び始めてしまいました。

こんなお子さんいませんか?

A君のように、活発で人懐っこいけど、落ち着きがなく、次から次へと興味が移り変わる。
他にも下記に挙げた特徴のあてはまるこのようなお子さん、園にいませんか?

 ・よく動き回り、集中力があまり続かない
 ・年齢や知的理解に対して、落ち着きがない
 ・音や物などに刺激されて、次々に興味が移り変わる
 ・衝動的に手を出してしまう
 ・目が離せない
 ・他のお子さんとトラブルが多い

ADHDとは?

上記のような特性があるお子さんは、ADHD(注意欠陥多動症)と診断されることもあります。
ADHDタイプのお子さんは全体の3.1%と言われており、大きく分けて3タイプに分かれます。

①不注意タイプ:忘れ物やなくしものが多い。約束事も忘れてしまうことが多い。集中力の弱さがある。
②多動タイプ :ひっきりなしに身体の一部を動かし続けている。自分の話したいことを優先にして、お話しを聞けずにしゃべり続ける。
③衝動性タイプ:人のものでも欲しいものがあれば取ってしまう。列に割り込んでしまうなど、集団の中で馴染めないことも多い。行動にブレーキを掛けることが難しい。

どう関わったらいいの?

ADHDという診断名でひとくくりにするのではなく、まずはお子さんの特性を理解してかかわっていくことが大切です。幼児期は誰しも多動性や衝動性を持っていますが、発達に合わせて落ち着きが出てくることもあります。また、ご家庭では症状が表面化しづらく、集団行動で初めて特性が目立つようになります。
A君の場合、周りが騒がしい環境下で、その日の予定を口頭でのみ伝えられたため、先生の声を聴き分けることができず、何をしたらよいのか分かりません。そして、踊りの練習では他の園児が周りにいるなかでは先生の姿も見えず、そのうえ真似(模倣)をすること自体、A君にとっては難しい課題であり、その場から逃げ出したくなったのではないかと考えられます。

ADHDタイプのお子さんへの関わり方

・環境調整:本人の興味を引きやすいもの、刺激になり易いものを把握し、できる限り整理し少なくする。
・視覚化 :聞いて理解するより目で見て理解するほうが得意であるため、絵カードなどで視覚化することでいますることや終わりの見通しがもてるようになる。
・フィードバック:うまくできた場合など、しっかりわかりやすく褒めることで、自己調整能力を高めていく。思いっきり、騒いだり 身体を動かすプログラムを入れると、その後の集中力がUPすることも。

私たちの日常生活に欠かせない「視覚機能」。
衝突事故は、子どもの「視覚機能」が原因かもしれません!

執筆者情報

執筆:株式会社東京リハビリテーションサービス 
作業療法士・公認心理師 竹中 佐江子

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