2025年5月に成立した改正下請法(通称「取適法」)には、発荷主から元請事業者への運送委託が規制対象として追加されるなど、トラック運送事業者にとって重要な改正事項が盛り込まれており、令和8年1月1日より施行されます。そこで今回と次回で、改正下請法(取適法)の主な改正内容をご紹介します。
◆下請法とは
下請法とは、親事業者の下請事業者に対する取引を公正なものにするとともに、下請事業者の利益を保護することを目的としたもので、下請事業者を守るために制定された法律です。
2025年5月の改正により、法律名が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(通称「取適法」)に変更され、「親事業者」が「委託事業者」に、「下請事業者」が「中小受託事業者」にそれぞれ変更されましたので、以下の文章では、変更された用語を使用することとします。
◆主な改正事項
①対象取引に「特定運送委託」を追加
特定運送委託とは、事業者が販売する物品、製造を請け負った物品、修理を請け負った物品、作成を請け負った情報成果物が記載されるなどした物品について、その取引の相手方(当該相手方が指定する者を含む。)に対して運送する場合に、その運送の行為を他の事業者に委託することをいいます。
改正前は、物品の運送の再委託が対象取引となっていましたが、改正により、発荷主が運送事業者に対して物品の運送を委託する取引が追加されました。

②「従業員数基準」の追加
取適法が適用される事業者については、改正前は資本金の基準だけでしたが、改正により従業員数基準が追加されました。
特定運送委託に関しての基準については、下図のようになります。

③協議を適切に行わない代金額の決定の禁止(新設)
コストが上昇している中で、協議することなく価格を据え置いたり、コスト上昇に見合わない価格を一方的に決めたりするなど、上昇したコストの価格転嫁についての課題がみられることなどから、対等な価格交渉を確保するため、代金の額に関する協議に応じないことや、協議において必要な説明または情報の提供をしないことによる、一方的な委託代金の額の決定が禁止されます。
④手形払等の禁止(新設)
支払い手段として手形等を用いることにより、発注者が受注者の資金繰りに係る負担を求める商習慣が続いていることから、代金の支払手段について、手形払が禁止されます。
また、その他の支払手段(電子記録債権や一括決済方式(ファクタリング等)など)についても、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものは禁止されます。
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記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社

