◆保育園での歯科検診で、歯科医師から園児の口腔機能についての指摘を受けたМ先生
歯科検診時、M先生は歯科医師から「最近、常にお口が開いてしまう「お口ぽかん」や、唾液の量が少なくお口が渇いている園児が増えています。むし歯予防だけではなく、お口の機能を上げる取り組みを園で導入した方が良い」と指摘されたため、早速具体策の検討に入りましたが思いあたりません・・・。

◆生活の変化や食スタイルの変化と共に、口腔疾患の発現状況は大きく変わってきています

口腔疾患である“むし歯(う蝕)・歯周病、歯列不正(歯並び)“は、生活習慣の大きな影響を受けます。近年の子ども一人の平均むし歯本数は、3歳児 2.90本(平成元年)→0.54本(平成28年)で、12歳児 4.30本(平成元年)→0.84本(平成28年)で、う蝕有病率は、 88.3%(平成元年)→35.5%(平成28年) と、年々減少しています。


 また、全くむし歯がない子どもと、たくさんのむし歯が出来てしまう子どもの二極化が生じていることも、ここ数年の特徴といえます。一方で、歯周病(歯肉炎)や歯列不正(歯並び)など罹患率・発症率は、増加している傾向です。


【参考】
「令和4年歯科疾患実態調査」の結果(概要)を公表します|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33814.html
厚生労働省 [PDF]う蝕罹患の現状
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000358782.pdf

◆歯周病は大人だけに起こることではありません

歯周病と聞くと、「大人、特に年齢が上がってから罹る病気」というイメージが強いかと思いますが、口腔衛生状態が悪ければ誰でも・いつでも罹患します。また、始めて罹患する年齢も年々若年化している現状です。小学生になると仕上げ磨きをやめてしまうご家庭も多いのですが、乳歯から永久歯にはえ変わる時期でもあります。
➡まだまだ大人の手助けが必要で、年齢に応じて仕上げ磨きの関わり方を変えていく必要があります。
特にコロナの影響で、ここ数年は自宅待機・マスク生活・黙食など子どもの心身に制限が課せられ、重要な成長発達のチャンスも奪われていたという影響も懸念されます。日常の生活が当たり前に送れない環境だからこそ、お口を育てるちょっとした工夫を普段の行動の中に意識的に取り入れることで不安を払拭していきましょう。

◆保育園や家庭できる口周りを動かす遊びを通じて「よいお口」を育てていきましょう

むし歯予防の歯磨きと共に生活習慣・特に遊びの中に口腔機能向上のプログラムを取り入れることがオススメです。

・歌の時間を増やす・早口言葉・変顔競争・お口を使って遊ぶ(風船・紙風船を膨らませる、ティッシュや紙吹雪を吹く、
・給食メニューで咀嚼回数アップや異なる食感を感じられるメニューにする・歯磨時に簡単なお口のマッサージをする(手でほっぺを揺らす)
・ぶくぶくうがいを意識的に行う

※お水ではなく空気で行うこともできるので、誰でも・どこでも・いつでもできます。ぜひ取り入れてみていただきたいと思います。

むし歯予防とともに、「お口を育む」遊びなどを日頃の生活習慣に取り入れていくことが大切です

執筆:宗田香織(歯科衛生士/日本こども成育協会公認講師)
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