
◆午後のお昼寝明け、1歳のAちゃんは窓際の絵本棚のそばで、保育士が片付けをしている間に静かにカーテンのそばへ。次の瞬間・・・。誰も音に気づくことはありませんでした。ほどなくしてAちゃんは、首にブラインドの紐が絡まった状態で見つかります。助けを呼ぶ声もなく、息をしていない――。 「まさか、室内でこんなことが起こるなんて」職員の誰もが信じられませんでした。

なぜ起きたのか
事故は“偶然”ではなく、“条件がそろった結果”として起きます。 一見安全そうに見える保育室にも、危険が潜んでいることがあります。「なぜ起きたのか?」を考えることは、同じ悲劇を繰り返さないための第一歩です。ここでは、環境・行動・構造・子どもの特性という4つの視点から、原因を整理してみましょう。
| 環境要因:ブラインドの紐が子どもの手の届く高さに垂れていた 行動要因:職員が「安全な室内」という思い込みで、窒息リスクに注意が向いていなかった 構造的要因:ブラインドの紐は軽く触れるだけで首に巻き付きやすく短時間で意識を失う危険性が高い 年齢特性:乳幼児は首の筋力が弱く、頭部が重いため、引っ張られやすい |
「事故の背景には、“音がしない危険”という盲点がありました。泣き声がしない=安全、ではないことを共有する必要があります」
原因が分かったら、次に必要なのは“日常でどう防ぐか”の視点です 危険をゼロにすることは難しくても、“気づける仕組み”“防げる環境”を整えることはできます 以下は、現場で実践しやすい具体策を、紹介します
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◆環境整備 ◆衣類の安全:フード付きや長い紐つき衣類はできるだけ避ける ◆遊び・活動の管理:なわとび・ロープ遊びは職員の目が届く範囲でのみ実施 ◆職員間の共有:「安全点検チェックリスト」を用い、定期点検+職員間報告を実施 |
◆ 「“静かな窒息”は、静かな環境ほど起きやすい。見えない危険を“見える化”する取り組みが、命を守ります」
窒息事故は「音がしない」「短時間で命に関わる」ことが最大の特徴
対策のカギは、「気づく仕組み」と「定期的な点検の習慣化」
室内=安全という思い込みをなくし、「環境を変えることで事故を防ぐ」意識を園全体で育てましょう
執筆:八重樫 貴之 (作業療法士)
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