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介護ニュース<11月号> 重大事故は絶対に起こしてはいけない!」という管理者

2025/11/05 介護
介護ニュース<11月号>  重大事故は絶対に起こしてはいけない!」という管理者

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■見守り中の転倒で硬膜下出血と骨盤骨折
 デイサービスひまわり苑は特養併設で、築年数が古い施設です。特に浴室が広く滑りやすいため、職員は絶えず注意をしています。ある時、歩行自立の利用者Hさんが浴槽までいくところを職員が付き添っていると、突然足を滑らせて転倒してしまいました。歩行を見守り介助していた職員は、すぐに手を差し伸べて支えようとしましたが、間に合いませんでした。
 Hさんは救急搬送され、頭部打撲による硬膜下出血と骨盤骨折という重症事故となり、以前の身体機能に回復することは不可能と言われました。
 特養の施設長は何度も被害者家族を訪問し、謝罪の他、様々な家族への対応で大きな負担を強いられることになりました。それ以来施設長は、「とにかく重大事故は絶対に起こしてはならない」と、頻繁に現場職員に厳しく指導します。しかし、現場の職員はどのようにして重大事故だけを防いだら良いのか分かりません。

 重大事故の対策は損害軽減策と事故発生時の対応

 ■重大事故は職員の責任か? 

 損害の大きな事故が起こると、現場の大きな失態であるかのようにとらえる管理者がいます。しかし、事故防止活動の評価という点では、損害の大きさはそれほど重要なことではありません。転倒した時に足をぶつけるのか、頭部を強打するのかはコントロールできないからです。

事故の評価方法はその目的によって様々な基準がありますが、事故防止活動の優劣は損害の大きさやその頻度ではなく、「質」で評価しなくてはなりません。起きた事故をその質によって5段階で評価することで現場スタッフの事故防止活動の努力を正当に評価することができます。

 ■重大事故の対策

 重大事故を職員の努力で防ぐことは難しいのですが、事故防止対策には損害軽減策という方法があります。事故が起きた時ケガをしないようにする、もしくは命にかかわる事故にならないようにする対策です。例えば、夜間ベッド脇にマットを敷くことで、転倒した時に骨折をしないようにすることは可能です。知的障害者施設ではてんかんの持病を持っている利用者は、発作が起きた時の転倒による頭部の損傷を防ぐためにヘッドギアをしているというケースもあります。
 また、事故発生時に適切な救命対応を行うことも、重要な損害軽減策の一つです。誤嚥事故は防ぐことが難しい事故ですが、発生した時に適切な救命対応と迅速な救急車の要請によって、死亡事故を防ぐ対応はしなければなりません。このように、介護現場では事故を未然に防ぐことだけでなく、事故の損害を軽減する対策も有効なのです。

監修 株式会社安全な介護 山田 滋

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