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11月号「遺言書を作成するときのポイント」~思いを伝える遺言書~

2025/10/30 相続
11月号「遺言書を作成するときのポイント」~思いを伝える遺言書~
 
 

事例

Xさんは75歳になったのを機に、奥様と遠方に暮らす3人の娘さん達のために遺言を作成しようと考えました。
お仕事も現役で続けており、特に健康に不安はありませんでしたが、「もしものことがあった時に家族に余計な心配や負担をかけたくない」というご家族への深い思いからの、遺言作成のご相談でした。
財産を詳しく見ていくと、ご自宅の他にも不動産があり、多額の預貯金や有価証券をお持ちのほか、10契約以上の生命保険にも加入されていました。ご自身でも「こんなに色々な財産があるのか!」と驚かれたほどです。Xさんは改めて遺言作成の決意を固めるとともに、このままでは残された家族の手続きが大変だと感じたようです。その後、お打合せを重ねながら、不要な土地の売却や生命保険の解約、死亡保険受取人の変更といった財産の整理を進め、公正証書遺言を無事に作成されました。
元気に仕事をされていたXさんが突然お亡くなりになったのは、それからたった2年後のことでした。当時、世界中で新型コロナウィルスが拡大し、遠方にお住まいの娘さん達との行き来も制限される状況下であったため娘さん達は看取ることができませんでした。

結果

Xさんの相続手続は、急に万が一のことがあった時のためにと備えておいた遺言が大きな力を発揮しました。公正証書で作成していたので、すぐに相続手続に入ることができます。遺言の内容は、Xさんから事前に聞かされていた為、奥様や娘さんたちは戸惑うことなく、Xさんの意向に沿った相続手続をスムーズに終えることができました。
さらに、Xさんは娘さん達には内緒で、自分の思いを遺言の付言事項に記していました。
家族全員のことを思って財産の配分を決めたこと、これから家を継ぐにあたり金銭面で負担の多くなる長女の財産を多くしたこと、不動産や墓地のことで困ったときに連絡する業者のこと、残された母を大事にすること、先祖をはじめ家族や多くの皆さんの尽力があり人生を振り返ると私の一生は幸せであったこと、そして
娘3人それぞれへのメッセージ、最後に妻への感謝の気持ち…。
手続きを終えて娘さんは「もし遺言がなければ、相続人全員での遺産分割協議や、
財産調査や相続手続で各所を回る必要があり、コロナ禍では容易にはできなかったかも
しれません。父が元気なうちに作ってくれた遺言があったこと、本当にありがたく、嬉しかった
です。」と、感慨深げにおっしゃっていました。

 

遺言書を作成するときのポイント

●財産の棚卸

 ご自身の財産をすべて把握するのも大変ですが、ましてや、遺されたご家族にとって、故人の財産を調査するのは非常に大きな負担となります。多岐にわたる財産を漏れなく洗い出すには専門的な知識と時間が必要です。ご自身の財産を明確にし、ご家族の負担を減らすためにも、遺言の作成は非常に有効です。最近では、終活としてエンディングノートで財産の棚卸など、遺言作成の下準備をされる方もいらっしゃいます。また、遺言書には自筆
 証書遺言と公正証書遺言がありますが、検認の必要なくスムーズに執行できることや、無効になるリスクも極めて低く紛失や偽造の恐れがないことから、公正証書遺言での作成が奨励されています。

●遺言書の「付言事項」

 遺言書に記載する内容の中で、記載しても法的な効力が生じない文言のことを「付言事項」といいます。法的効力を有する事項では伝えることができない「遺言者の思い」などを書くことで、遺言のスムーズな執行に役立つ場合があります。例えば、法定相続分と異なる内容を指定する場合、相続人間に生じる不公平感を回避するために、「なぜそのような分け方をしたのか」を付言事項に書いておくと、不満を持つ相続人の理解を促すことが可能となります。付言事項の内容には特に決まりはありません。感謝やメッセージを遺す方も多いようです。

 

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会