事例

Aさんのお父様のXさんが病気のためお亡くなりになりました。

Xさんは先祖代々東京の下町で暮らしてこられたとのことで、相続人は奥様のBさんとAさんを含む3名のお子様の計4名。当初Aさんはご自分で相続手続きをしようと試みるも、都内のご自宅不動産の評価が高く、税務申告や不動産の名義変更が必要な可能性があり、当センターにご相談にいらっしゃいました。

ご面談の日にはご自身でまとめた財産の一覧表を持参され、不動産についてはご自宅とその周辺道路(私道)の土地だけということでした。固定資産税の通知書もお持ち頂きましたが、都税事務所発行の通知書のみでした。

相続人及び相続財産の調査を行い、不動産についても権利証を改めて確認するなどして、着々と財産の総額が確定しつつありました。

結果

最初の面談で、『お父様と同世代の方に、いわゆる原野商法により、地方に不動産をもっていらっしゃる場合がありますが、お父様から何かお聞きになったことはありますか?』と訊きしました。

Aさんはその場では、『いえ、ないと思います…』と答えていらっしゃったのですが、そのことがずっと引っかかっていたようで、お母様にも確認しながら、もう一度、不動産の書類がないか、家の中を探されたそうです。その結果、「倉庫の奥から北海道と沖縄県の土地の権利証が出てきました」とご連絡をいただきました。

登記簿謄本を取得して確認をしたところ、いずれの土地も間違いなくXさん名義のものであることが判明しました。地目は原野で固定資産税評価額が低く、固定資産税がかからない為、通知が送付されず、全く気づかれなかったようです。

北海道や沖縄県の土地があることを知ったAさんは、評価価値も低く、自分たちが将来に利用することはないので、できれば手放したいとのご希望を持たれました。しかし売却や贈与をするには、まずは相続人に名義を変更しておく必要がありますので、他の財産と共に遺産分割協議を行い、北海道や沖縄県の土地はAさん名義に変更しました。

思わぬ財産の発見で時間を要しましたが、相続税の申告には何とか間に合いました。
北海道や沖縄県の土地の処分が課題として残りましたが、Aさんは、「父も行ったかもしれないしどんなところなのか、まずは一度行ってみます」とおっしゃっていました。

ポイント

固定資産税 ~不動産にかかる税金~

固定資産税とは

不動産を所有している場合にかかる税金に「固定資産税」があります。1月1日現在の土地・家屋及び償却資産の所有者に対し、その固定資産の価格をもとに算定される税額を所在する市町村が課税する税金です。地価の変動に応じた適正な価格に合わせる為、3年に1度の基準年度に見直しが行われています。

課税されない場合の条件

本来は毎年、不動産所有者にこの固定資産税の納税通知書が送付されますが、不動産の価格が低いと通知書が送付されない場合があります。同一の市町村内で同一の者が所有している土地の合計額又は家屋の合計額が、土地については30万円、家屋については20万円に満たない場合、固定資産税が課税されないためです。
そのため、今回のケースのように、山林や原野に土地を所有していたとしても固定資産税が課税されずに、通知書が届かず、所有の事実を気付くことができない場合があるのです。

執筆者情報

事例発行元:相続手続支援センター事例研究会

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