転倒しないようにして欲しい

 デイサービスの利用者Hさんは、居宅で転倒して大腿骨を骨折しましたが、入院とリハビリを経て、3カ月ぶりにデイの利用を再開しました。娘さんはHさんの骨折による入院や治療で大変苦労したため、 「今度骨折したら2度と歩けなくなるから、絶対に転倒しないように注意して欲しい」とデイに申し入れを行いました。所長は、「お気持ちは分かります。しっかり見守ります」と約束しました。

 ところが、Hさんは少し認知機能の低下がみられることもあり、「立ち上がる時には呼んでください」とお願いしていても、忘れてしまって、自分で立ち上がり転びそうになることがありました。主任が「Hさんの転倒防止策を考えよう」とカンファレンスを開きましたが、「職員が交代でそばで見守る」という対策しか出てきません。カンファレンスは始まって10分でみんなが黙り込むといった結果に終わりました。

職員の手だけで事故を防ぐには限界がある

事故防止対策は3種類の方法がある

 転倒防止対策というと、転倒しそうになった時に職員の手で支えるという対策を思い浮かべてしまいますが、事故防止対策は職員の手による対策ばかりではありません。例えば、履きにくい靴を履いていれば転倒の危険が高くなることが考えられ、家族に話して履きやすい靴に替えてもらうことも、転倒防止対策です。また、どんな対策を講じても転倒が防ぐことが難しいと判断した場合は、ヒッププロテクター付きのパンツを履いてもらって、転倒した時骨折を防ぐことも重要な対策です。

事故防止対策は次の3種類があり、これらをバランス良く使い分けることが事故防止対策の効果をあげる秘訣です。

  • ①未然防止策

    事故の根本原因を究明し、これを除去する対策です。
    具体的には、ふらつきの原因となる靴や服装などの歩行条件を改善したり、杖や福祉用具を見直して改善するなどです。根本原因が除去できれば、危険な現象が発生しなくなり、大変効果的な方法であり、事故防止対策を考える順位としては最優先で考える対策です。

  • ②直前防止策

    事故が発生しそうになった時に、職員の手でこれを阻止する対策です。
    具体的には、転倒しそうなご利用者に付き添ったり、BPSDの多い認知症のご利用者を見守ったりする対策です。
    ひたすら職員のマンパワーに頼らなくてはならないので、職員の負荷が確実に増えることになり、考える順位としては、最後の順位、つまり最後の手段です。

  • ③損害軽減策

    事故が起きた時、損害をゼロもしくは軽減するための対策です。
    具体的には、ソファから立ち上がって転倒した時に骨折しないように、ソファの前の床に衝撃吸収マットを敷くなどの大腿骨の部分にパッドの入ったヒッププロテクター付きのパンツをはいてもらう対策も、損害軽減策です。職員の手で事故を防ぐのではなく、モノを使って損害(例えば骨折)を防ぐやり方ですので、職員の負担軽減にもなります。

執筆者情報

監修 株式会社安全な介護 山田 滋 

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