◆なぜBさんが車内に居るのか?

 7月○日土曜日、午後4時30分頃、デイサービスの送迎が始まりました。運転手は駐車場に行き送迎車を玄関に停車させました。主任が利用者を後部座席に誘導するため、車内を覗き込んだ時に異変に気付きました。最後部の座席上に人が倒れているのです。主任はすぐに救急車を呼びましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。倒れていたのは、デイサービスの利用者のTさんでしたが、Tさんの定期利用日は火曜と木曜なのでなぜ土曜日にデイに居たのか主任は疑問に思いました。警察官がやって来て運転手のMさんに対する事情聴取が行われました。Mさんによると、その日の朝、確かにTさんの家に迎えに行って、デイまでお連れしたが到着後に降ろした覚えがない、とのことでした。更になぜ利用日でない土曜日にTさんを迎えに行ったかを問われると、木曜日の送迎時に家族から「土曜日も利用させて欲しい」と言われ了解したが、デイサービスの職員に伝え忘れていたことが分かりました。
(2010年7月26日に千葉県で発生した事故の概要です)

今年も猛暑の予想、降ろし忘れ防止対策の徹底を!

何度も繰り返される送迎車の降ろし忘れ事故

2022年9月に牧之原市の幼稚園で3歳の園児を降ろし忘れ、車内に放置し熱中症で死亡させる事件が起きましたが、過去には5件の同様の事件が起きています。本事例は千葉県で発生したデイサービスの事故です。本事例の特徴は、デイサービス職員がその日利用者が来所することをまったく知らされていなかったことです。当然、スタッフによる出欠確認という最後のチェックが働かなかったのです。
しかし、この事故を不幸な偶然と片付ける訳にはいきません。デイサービスは毎日利用者が異なり、臨時利用や突然欠席になる人もおり、日々の利用者の確定が難しいのです。

《防止対策1》降車後の車内点検の徹底

 まず送迎車の降ろし忘れ防止対策の基本は、降車後の車内点検の励行です。幼稚園や保育園では置き去り防止安全装置の設置が義務付けられましたが、デイサービスでも設置することをお勧めします。
また、車内点検は利用者の降車後と業務終了時の車両駐車時の2度行う必要があります。特に駐車時の車内点検は、運転手任せにせず必ず事務職員などが同行して行うことが重要です。

《防止対策2》お迎えだけではない「お送り」も注意!

 一昨年デイ終了後に自宅にお送りに行って降ろし忘れ、施設に戻り駐車場に一晩放置するという事故も起こりました。厳冬期であれば車内で凍死する可能性もあります。夕方は車内も暗くなり、職員によるチェックも手薄になります。駐車時にスマホで車内を撮影して、職員宛にメールで送るなどの対策も必要です。 

《防止対策3》利用者の確定作業と出欠確認の徹底

 

本事例では、利用者の臨時利用を運転手が家族から受けて忘れてしまったことが、大きな問題になりました。家族は送迎の運転手と職員の区別がつきませんから、業務に関する重要な伝言も運転手に伝えてしまいます。最近では運転手は1台ずつ携帯を支給されていることが増え、家族から重要な伝言を預かる場面では、直接携帯でスタッフに伝えてもらうなどの工夫が必要です。
 さて、最後の砦となる職員による出欠確認と家族連絡ですが、誰が責任を持ってこの最後のチェックを行えば良いでしょうか?現場のスタッフも利用者が来所した時間はとても忙しく、適しているとはいえないため、事務員さんにお願いして厳しくチェックしてもらうようにしましょう。

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監修 株式会社安全な介護 山田 滋

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