高齢ドライバーによる交通事故の対策として、新しい免許証更新制度が今年の5月13日から始まります。新しい制度の変更点は主に75才以上の方の更新手続きとなります。75歳以上で一定の違反行為があった運転者を対象とした運転技能検査の義務付けや、認知機能検査や高齢者講習にも一部改正が予定されています。今回の紙面では、この新制度のポイントとなる部分をご紹介していきます。

新制度の概要

対象年齢や74歳以下の方の手続きには大きな変化なし

高齢ドライバーの免許更新制度の対象者は、新制度でも70歳以上となり対象年齢は今までと変わりません。また、70歳~74歳の方の手続きも今までと大きな変更はなく、高齢者講習(講義、適正検査、実車指導)を受講することで免許更新を行うことができます。一部変更が加えられたのが高齢者講習での実車指導の内容で、今までは助言や指導に留まっていたものが、運転技能が採点され、本人にその評点が伝えらることが計画されています。(実車指導は、この後にご紹介する運転技能検査とは異なるもので、合格・不合格の判定は行われません)

75歳以上の方の手続きに変化

こちらの手続きは大きく変わります。75歳以上で一定の違反行為があった運転者には運転技能検査が義務付けられます。この検査に合格できないと高齢者講習に進むことが出来ず、免許を失うことになってしまいます。少々厳しい改定ですが、実際の運転を第三者が確認し、危険性を客観的に評価してもらえることは、運転を継続するか止めるかを判断するにも良い機会になると思います。

一方、75歳以上で違反が無い人と、運転技能検査に合格した人は、先ずは認知機能検査を受け、高齢者講習の受講、そして更新手続きとなります。
認知機能検査の結果による仕組みは従来通りですが、検査の手法と内容に簡素化が図られます。タッチパネルタブレットでの検査が許されることになりました。導入が進めば今まで紙への記入で行われてきましたが、回答記入の手間が簡素化され、効率的な検査となります。採点も迅速に行えるので検査結果もスピーディーに確認できることになりそうです。

新制度のポイントその1 運転技能検査(実地テスト)

新制度では75歳以上で過去3年以内に一定の違反行為があったドライバーを対象に、実車運転での運転技能検査が義務付けられます。現行制度の高齢者講習でも実車運転が行われていますが、これは指導員からの注意や助言など指導を目的としたものでした。新設されるこの運転技能検査では運転が検査され合格・不合格が判定されます。運転の安全が基準に達しない場合は不合格と判定され、免許更新ができなくなり、免許証を失うことになってしまいます。

技能検査は何をチェックされるの?

新制度で新設させるこの運転技能検査は、5つの課題で危険度が採点されます。課題となる5つの状況は、「検査員が指示した速度での走行」 「一時停止場所での停止」 「右折・左折の走行」 「赤信号での停止」 「段差乗り上げ」での運転となります。
検査は100点満点から運転の危険度に応じて減点方式で採点され、合格基準は100点満点中、第1種免許で70点以上、第2種免許で80点以上となります。
以下は減点の一例で、これら以外にも危険な運転行為が減点となります。

◆停止線を越えて停止した場合 -10点~-20点
◆段差を乗り上げて停止することが出来なかった場合 -10点
◆指定速度から±約10㎞/h内で走行できなかった場合 -10点
◆信号無視や対向車線の走行 -40点

日常的な運転を丁寧にこなすだけでは合格は難しそうです。教習所での仮免許試験や卒業検定試験を思い出していただき、ほぼそれに近い基準での検査と考えるのがよさそうです。万が一、不合格になってしまった場合にも、更新期間の満了までの間なら繰り返し受検することができます。ただし運転技能検査は混雑が予想されます。予約状況によっては受検できる回数は限られてしまいますので、1回での合格を目指して慎重・丁寧な運転で受検してください。

運転技能検査となってしまう一定の違反は11種類

運転技能検査の対象者は3年間に一定の違反歴がある運転者となりますが、どの様な違反が該当するのでしょう。この一定の違反は11種類が指定されています。駐車違反や免許不携帯など危険な運転行為とは関係の薄い違反は対象外ですが、速度超過、信号無視、一時停止違反、右左折違反、横断歩行者妨害、携帯電話使用、安全運転義務違反、通行帯違反、通行区分違反、交差点安全進行義務違反、横断禁止違反など、走行中の違反はほとんどが対象になると考えてください。75歳前の3年間に1回でも違反を犯すと対象となってしまいますので、72歳からは細心の注意で運転していただき、違反や事故の無い運転を目指してください。できれば運転技能検査は回避したいものです。

新制度のポイントその2 認知機能検査の簡素化

新制度でも75歳以上を対象に認知機能検査が行われますが、検査内容や手法に簡素化が図られます。タッチパネルタブレットの導入が予定され、記入方式で行われていた検査が、順次タッチパネルでの回答へと移行していきます。検査内容でも、時計を描く「時計描画」の検査が無くなるなど、設問が減少し簡素化されます。また、事前に医師の診断書を提出することで、認知機能検査は免除されます。

検査結果については、従来制度では認知機能に「問題なし」「やや問題あり」「問題あり」の3区分でしたが、新制度では「認知症のおそれあり」と「認知症のおそれなし」の2区分に判定されます。従来の「認知機能に問題あり」が、新制度では「認知症のおそれあり」に相当し、この判定を受けた場合には、医師を受診して認知症ではない診断を受けなければ免許更新ができません。
検査の設問は決して難しくはありませんが、体調が悪いと本来の力を発揮できないこともあります。検査が近づいたら体調管理は万全にしておきましょう。

 

 

執筆者情報

記事の作成・編集:並木 靖幸氏 / 特定非営利活動法人 高齢者安全運転支援研究会 事務局次長

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