デジタル田園都市国家構想総合戦略に沿った地方版総合戦略改訂とその背景

2021年11月に検討が開始された「デジタル田園都市国家構想」ですが、その前身は、2014年12月に施行された「まち・ひと・しごと創生法」をもとに設定された「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」及び「まち・ひと・しごと創生総合戦略」です。

国はこの「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を抜本的に改訂し、2023年度から2027年度までの5か年の新たな総合戦略を策定しました。デジタル田園都市国家構想基本方針で定めた取組の方向性に沿って、KPIとロードマップを策定しています。

現在、国は各地域(都道府県単位)で、新たな総合戦略の説明を行っています。国の総合戦略に合わせて、自治体がそれぞれで策定している「まち・ひと・しごと創生総合戦略」をベースとした「地方版総合戦略」についてもデジタル田園都市国家構想に合わせた形で改訂を依頼しています。その改訂とは、地域それぞれが抱える社会課題等を踏まえ、地域の個性や魅力を生かした地域ビジョンの再構築です。国はこの点についても地域ビジョン実現に向け、政府一丸となって総合的・効果的に支援する観点から、必要な施策間の連携をこれまで以上に強化したいと考えています。

地方のデジタル化や地域ビジョン実現に向けたKPI

国は大目標として、2030年度までに全ての地方公共団体がデジタル実装に取り組むことを見据え、デジタル実装に取り組む地方公共団体を2024年度までに 1,000団体、2027年度までに 1,500団体としています。その上で地方のデジタル実装やビジョンについて、以下のKPIを設定しています。

出典:デジタル田園都市国家構想総合戦略説明会資料

デジタル実装の主要なKPI

● サテライトオフィス等を設置した地方公共団体
1,000団体(2024年度まで)、1,200団体(2027年度まで)

● 企業版ふるさと納税を活用したことのある地方公共団体
1,500団体(2027年度まで)

● デジタル技術も活用し相談援助等を行うこども家庭センター
設置市区町村:全国展開(1,741市区町村)を目指す

● 1人1台端末を授業でほぼ毎日活用している学校の割合
100%(小学校18,805校、中学校9,437校)(2025年度)

● 新たなモビリティサービスに係る取組が行われている地方公共団体
700団体(2025年まで)

● 物流業務の自動化・機械化やデジタル化により、物流DXを実現している物流事業者の割合
70%(約3万5千事業者)(2025年度)

● 3D都市モデルの整備都市
500都市(2027年度まで)

地域ビジョン実現に向けたKPI

● スマートシティの選定数
100地域(2025年まで)

● 「デジ活」中山間地域の登録数
150地域(2027年度まで) 

● 脱炭素先行地域の選定及び実現
2025年度までに少なくとも100か所選定し、2030年度までに実現 

● 地域限定型の無人自動運転移動サービスの実現
50か所程度(2025年度目途)、100か所以上(2027年度まで)

出典:デジタル田園都市国家構想総合戦略(概要)

これらの実現に向けたポイントとして「地域ビジョン実現に向け、国は政府一丸となって総合的・効果的に支援する観点から、必要な施策間の連携をこれまで以上に強化する。」としています。具体的な施策である交付金などに今まで以上に自治体はアンテナを立てながら、地域に課題解決に活かしていくことが大切になっていきます。

出典:デジタル田園都市国家構想総合戦略説明会資料

デジタル田園都市国家構想総合戦略の基本的な考え方

KPIを見たうえで改めて基本的な考え方を見直すと、その施策の方向性についても考えやすくなります。地域としても取り組みの基本的な指針としてとらえやすくなります。以下に国が示しているデジタル田園都市国家構想総合戦略の基本的な考え方なので、改めて以下に列挙しました。

● テレワークの普及や地方移住への関心の高まりなど、社会情勢がこれまでとは大きく変化している中、今こそデジタルの力を活用して地方創生を加速化・深化し、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指す。

● 東京圏への過度な一極集中の是正や多極化を図り、地方に住み働きながら、都会に匹敵する情報やサービスを利用できるようにすることで、地方の社会課題を成長の原動力とし、地方から全国へとボトムアップの成長につなげていく。

● デジタル技術の活用は、その実証の段階から実装の段階に着実に移行しつつあり、デジタル実装に向けた各府省庁の施策の推進に加え、デジタル田園都市国家構想交付金の活用等により、各地域の優良事例の横展開を加速化。

● これまでの地方創生の取組も、全国で取り組まれてきた中で蓄積された成果や知見に基づき、改善を加えながら推進していくことが重要。

出典:デジタル田園都市国家構想総合戦略説明会資料

デジタル田園都市国家構想総合戦略を地域の課題解決に活用するためには

デジタル田園都市国家構想は、自治体の力だけで実現できるものではなく、民間の力との協力が必要です。

従来型の「自治体が庁内で課題を抽出して、その実現が可能な業者を入札選定する」では、専門性が乏しい自治体の中で十分な成果の得られる施策が考えられる可能性はとても低いです。「餅は餅屋」と言いますが、専門家に知見を得ながら進める必要があります。

考え方を変えなくてはならない一つのポイントが、「知見」に対して価値があるということです。ノウハウや技術などそれを得るために自治体は対価を出していく必要があります。

また、その検討の過程は企業の選考の過程でもあると捉え、よりよいアイディアや技術を持っている企業にそのまま任せることも考えていかなければなりません。そうすることでその課題にマッチした提案や議論を行うことが期待できます。

以下は、イメージ化したものです。

それぞれの形はありますが、成功している地域や先進事例の取り込みをうまく進めている地域は、上記に近いやり方で行っていると考えます。国が出しているスタートアップの優遇もこちらに近い形と言えます。

※本ニュースを無断で複製または転載することを禁じます

執筆者情報

著者 株式会社カルティブ 代表取締役 池田 清

こちらの記事もおすすめです