岸田政権が進めている「デジタル田園都市国家構想」。
令和4年6月7日閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」および「デジタル田園都市国家構想基本方針」では、以下が4つの柱として以下が触れられている。

(1)デジタルの力を活用した地方の社会課題解決
(2)ハード・ソフトのデジタル基盤整備
(3)デジタル人材の育成・確保
(4)誰一人取り残されないための取組

「デジタルの力を活用した地方の社会課題解決」は、地方活性化を図るため、地方の経済・社会に密接に関係する様々な政策分野においてデジタルの力を活用した社会課題解決や魅力向上を図ることが必要としたうえで、4つ要素に分けて2024年度末までにデジタルの実装に取り組む地方公共団体1,000団体の達成を目指すとしている。
① 地方に仕事をつくる
② 人の流れをつくる
③ 結婚・出産・子育ての希望をかなえる
④ 魅力的な地域をつくる

「ハード・ソフトのデジタル基盤整備」は、デジタル技術の活用によって、地域の個性を活かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会を実現するために5つの取り組みをあげている。
① デジタルインフラの整備
② マイナンバーカードの普及推進・利活用拡大
③ データ連携基盤の構築
④ ICTの活用による持続可能性と利便性の高い公共交通ネットワークの整備
⑤ エネルギーインフラのデジタル化

「デジタル人材の育成・確保」は、デジタル技術の活用による地域の社会課題解決を全国で進めるためには、その担い手となるデジタル人材の育成・確保が不可欠で、デジタル人材が質・量ともに不足していることに加えて、都市圏への偏在も課題とし、以下の4つを重点領域としている。
① デジタル人材育成プラットフォームの構築
② 職業訓練のデジタル分野の重点化
③ 高等教育機関等におけるデジタル人材の育成
④ デジタル人材の地域への還流促進
この施策は、2024年度末までに年間45万人育成する体制を整え、2026年度末までに230万人の育成を目指すとの定量的な目標や性別の分け隔てなく全ての人材が自分の力を発揮できるようジェンダーギャップの解消、デジタル分野の高度外国人材が地域におけるデジタル実装の新たな担い手として定着するような支援もするとしている。

「誰一人取り残されないための取組」は、地理的な制約、年齢、性別、障害の有無等にかかわらず、誰もがデジタル化の恩恵を享受することにより、豊かさを実感できることが重要とし、国や地方公共団体だけでは実現できず、官民一体となって取り組む必要があるとして「皆で支え合うデジタル共生社会」を提唱している。その実現のために以下の2点を共通認識としている。
① デジタル機器等に不慣れな人にも分かりやすく、使いたくなるようなデザインを考案するなど、利用者目線に立って、デジタル機器・サービスを提供すること
② 高齢者や障害者に対して、デジタル機器の操作方法等とともに、デジタル技術により、何ができ、どのような課題を解決できるかを分かりやすく情報共有すること

令和5年・令和4年度補正予算

デジタル田園都市国家構想の取り組みは、「デジタルの力を活用した地方の社会課題解決」であり、「地域の特色を活かした分野横断的な支援」する点にあり、国の予算措置に関する考え方も変わっている。

令和5年度(令和4年度補整)の概算要求からは、個別の交付金などもあわせて「横断的」に構成の見直しもされている。その為「地方創生推進交付金」、「地方創生拠点整備交付金」に昨年の「デジタル田園都市国家構想推進交付金」の3つを「デジタル田園都市国家構想交付金」としている。

デジタル田園都市国家構想交付金について(令和4年11月)より抜粋

「令和4年度予算・令和3年度補正予算」と「令和5年・令和4年度補正予算」を比較について、以下の資料が示されている。

昨年まで一言で「デジ田の交付金」と言われていたものが、「デジタル実装タイプ」として組み入れられ、「地方創生推進交付金/地方創生拠点整備交付金」などが「地方創生推進タイプ/地方創生拠点整備タイプ」として、再整理がされている。

地方創生推進タイプ(仮称)/地方創生拠点整備タイプ(仮称)とは

地域再生法に基づき、地方公共団体が策定した地方版総合戦略に位置付けられ、地域再生計画に記載された先導的な取組や施設整備等を安定的かつ継続的に支援することを目指している。
例えばSociety5.0型であれば、未来技術を活用した、新たな社会システムづくりの全国モデルとなりうる事業(「 先導性 」が要件)を対象に複数年(最長5年)にまたがる施策も可能です。補助上限3億円なので、5年で15億円までとなります。補助率が1/2なので、最大30億円となる。

デジタル実装タイプ

デジタルを活用した地域の課題解決や魅力向上の実現に向けて、以下の取組を行う地方公共団体に対し、その事業の立ち上げに必要なハード/ソフト経費の支援を目的としています。前回まで、タイプ2・3の中の一つで触れられていたマイナンバー関連が、今回は施策が具体化され、利活用の創出や推進を具体的に求めている。

昨年度と金額ベースで比較すると以下の表になる。

単位:億円

デジタル田園都市国家構想は、官民連携した取り組みを前提としていて、特に地方公共団体の積極的な取り組みが求められる内容である。特にデジタル実装タイプは、実装後すぐに自走(事業継続)が求められることなどを見ても、官民連携は必須と言える。

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執筆者情報

著者 株式会社カルティブ 代表取締役 池田 清

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