2022年(令和4年)9月27日、厚生労働省より公表された「貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の在り方について(報告)」について、今回は、新設された「予期しない事象に遭遇した場合」と、特例のうちで見直しが行われた「休息期間の分割の特例」及び「2人乗務の特例」の内容をご紹介します。今回の見直しを受けて改善基準告示の改正が行われ、2024年(令和6年)4月の施行が予定されています。事業者の皆さまには、新たな改善基準告示の内容に即した勤務割や乗務割の検討など、早めの対応が求められます。

改善基準告示見直しの内容

⑤予期し得ない事象に遭遇した場合

◆新設

・事故、故障、災害等、通常予期し得ない事象に遭遇し、一定の遅延が生じた場合には、客観的な記録が認められる場合に限り、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間の規制の適用に当たっては、その対応に要した時間を除くことができることとする。勤務終了後の休息期間は、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとする。
(具体的な事由)
ア 運転中に乗務している車両が予期せず故障した場合
イ 運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航した場合
ウ 運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖された場合、道路が渋滞した場合
エ 異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となった場合

⑥休息期間の分割の特例

◆現行

・業務の必要上、勤務終了後、継続8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合には、当分の間、一定期間における全勤務回数の2分の1を限度に、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができるものとする。
・この場合において、分割された休息期間は、1日において1回当たり継続4時間以上、合計10時間以上でなければならない。
・一定期間は、原則として2週間から4週間程度とし、業務の必要上やむを得ない場合であっても2か月程度を限度とする。
・分割は、2分割に限らず、3分割も認められるものとする。

◆見直し

・業務の必要上、勤務終了後、継続9時間以上(※)の休息期間を与えることが困難な場合には、当分の間、一定期間における全勤務回数の2分の1を限度に、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができるものとする。
この場合において、分割された休息期間は、1日において1回当たり継続3時間以上、合計10時間以上でなければならない。
(※)長距離貨物運送に従事する自動車運転者であって、1週間における運行がすべて長距離貨物運送であり、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合 は継続8時間以上
・一定期間は、1か月程度を限度とする。
・分割は、2分割に限らず、3分割も認められるが、3分割された休息期間は1日において合計12時間以上でなければならないものとする。この場合において、休息期間が3分割される日が連続しないよう努めるものとする。

⑦2人乗務の特例

◆現行

・自動車運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合(車両内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限る。)においては、最大拘束時間を20時間まで延長することができる。また、休息期間は4時間まで短縮することができる。

◆見直し

・自動車運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合(車両内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限る。)においては、最大拘束時間を20時間まで延長することができる。また、休息期間は4時間まで短縮することができる。
・ただし、当該設備が次のいずれにも該当する車両内ベッド又はこれに準ずるもの(以下「車両内ベッド等」という。)であるときは、拘束時間を24時間まで延長することができる。
・また、当該車両内ベッド等において8時間以上の仮眠時間を与える場合には、当該拘束時間を28時間まで延長することができる。
この場合において、一の運行終了後、継続11時間以上の休息期間を与えるものとする。
ア 車両内ベッドは、長さ198cm以上、かつ、幅80cm以上の連続した平面であること。
イ 車両内ベッドは、クッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものであること。


「隔日勤務の特例」と「フェリー特例」は、現行どおりで変更はありません。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社

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