運転者教育の手法として効果が高いとされているのが「危険予知トレーニング」(以下、KYTと略称します)です。春秋の全国交通安全運動における公益社団法人全日本トラック協会(以下、全ト協と略称します)の実施計画のなかにも、「安全運行の確保」の最重点推進項目の一つとして、「WEB版ヒヤリハット集等を活用したKYTの実施」が掲げられます。そこで今回は 「WEB版ヒヤリハット集」を活用したKYTの実施方法等についてご紹介します。

KYT実施のポイント

◆KYTの実施時期
 冒頭で、KYTの実施は「秋の全国交通安全運動における最重点推進項目の一つ」と記しましたが、KYTは交通安全運動の期間中だけ実施すればよいというものではありません。運転者の安全意識の維持向上を図るためには、年間を通して定期的(例えば、毎月1回以上)に実施していくことが大切です。

◆KYTに使用する交通場面 
 KYTを実施していくためには、交通場面が必要です。従来は、運転席から見た交通場面を描いたイラスト又は運転席から撮影した写真などが利用されていましたが、ドライブレコーダ(以下、ドラレコと略称します)が広く普及した今日では、ドラレコ映像を活用する場合も多くなっています。
 KYTに利用できるドラレコ映像については、全ト協のホームページ上に「WEB版ヒヤリハット集」が提供されており、全ト協の会員であれば利用できます。
 「WEB版ヒヤリハット集」は、ヒヤリハット映像と事故映像が収録されています。どちらもKYTに活用できますが、ヒヤリハット映像については、下記のように分類されており、一層活用しやすくなっています。
○自転車・バイクなどの相手別
○高速道路・一般道路の道路別
○交差点・横断歩道などの発生場所別
○右折・左折などの行動類型別
○飛出し・前方不注意などの原因別
 全ト協 「WEB版ヒヤリハット集」へのアクセスは、下図のとおりです。

※ヒヤリハットの映像は視聴できますが、危険要因等の解説を視聴するためには「ユーザー登録」が必要です。

◆KYTとは
 KYTとは、ある交通場面を見て、そこにどのような危険があり、どうすれば危険を回避できるかを運転者自身が考えるという教育手法です。もともとは、転落や墜落などの労働災害を防止するために導入されたものですが、交通事故防止にも大いに有効だということで、運転免許の学科試験の試験問題の中にもKYTに関する項目が取り入れられています。

◆KYTの進め方 
 KYTの進め方には、大きく二つの方法があります。


<グループKYT>

 4~5人程度のグループを構成し、危険要因などをメンバー間で討議をしながら進めます。
 他の運転者の意見を聞くことによって、自分では想定していなかった危険要因や危険回避の方法を知ることができるという点などに大きなメリットあります。


<一人KYT> 
 グループを構成するのが難しい場合は、一人でKYTを実施することができます。運転者の休憩室などにネットにつながるパソコンを用意しておけば、乗務終了後など運転者の都合のつく時間に、全ト協のホームページにアクセスすればKYTを実施することができます。

◆KYTの進めるにあたっての留意点
・KYTに使用する場面は、自社の運行状況にできるだけ適応した場面を選定することがポイントです。そのためには事業者や管理者は、事前に 「WEB版ヒヤリハット集」の映像や解説を視聴しておきます。
・KYTを実施した場合は、必ず実施日時、使用場面などを運転者に記録させるようにします。

執筆者情報

記事の作成・編集:MS&ADインターリスク総研株式会社

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