ある会社の事例

一時帰国中の海外赴任者の給与に対する、源泉徴収漏れのニュースがありました。
 具体的な内容と注意点を教えてください。

海外赴任者が一時帰国して日本で働いた場合は、国内源泉所得として課税の対象になるため給与計算時には注意が必要です。


2022年5月、大手電機メーカーが、コロナウィルスの感染拡大により一時帰国した海外赴任者の給与を巡って所得税の源泉徴収漏れを指摘され、約1億4千万円を追徴課税されたという記事が掲載されました。同社は、帰国中の従業員がリモートで海外の業務を続けていたため課税対象に当たらないと判断したとみられますが、一時帰国中の日本国内での労働については国内源泉所得として課税対象になります。

国内源泉所得と国外源泉所得

海外赴任者(非居住者)に支給される給与が国内源泉所得、国外源泉所得のいずれに該当するかは、「どこで勤務した労働の対価か」により判断されます。海外勤務者は海外で勤務した労働の対価として給与が支払われるため、通常の給与は国外源泉所得に該当します。(つまり、非課税になります。)

●国内源泉所得が適用されるケース

上記のとおり、海外赴任者は日本から給与が支払われていても国内源泉所得が発生しない限り、日本では課税されないことになりますが、国内源泉所得に該当する給与が支払われる場合は、支給額に対して20.42%が課税されます。
 前述の電機メーカーのケースでは、携ったのが海外の業務であっても、働いている場所が日本であれば国内源泉所得となります。仕事の内容ではなく、「あくまでも働いた場所がどこか」により判断されます。
注)役員の場合は、国外で行う勤務も国内源泉所得となります。

●一時帰国ではなく、帰任して初めて支払う給与への課税

赴任後に初めて支払う給与は計算期間が国内勤務期間に該当するかで課税・非課税が分かれますが、帰任して最初に支払う給与・賞与は国内社員と同様に課税をします。赴任時、帰任時でその取り扱いが異なることに注意が必要です。

執筆者情報

資料作成:社会保険労務士法人アーク&パートナーズ

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