常時10人以上雇っている会社には、就業規則の作成および届出義務があります。
ただし、昨今のような労働環境が複雑化している中では、これまで以上にルール決めが大切です。

服務規律について

服務規律とは?

就業規則には、労働条件だけでなく「服務規律」を定めることも重要です。服務規律とは、従業員の方の行動規範、一般的な心得、遵守してほしいことを規定します。判例においても「企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なもの」であり、「労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負う」(富士重工業事件 最高裁第3小(昭和52年12.13)との判断があります。服務規律は労基法上の記載事項ではありませんが、明文化しておくことが望ましいです。

服務規律規定例

第○条(服務規律)

従業員は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職務能率の向上及び職場秩序の維持に努めなければならない。

2.従業員は、以下の事項を守らなければならない。

①常に健康に留意し、明朗はつらつたる態度をもって就業すること。  

②建設事業の現場において定められた労働安全衛生法の規定及び現場ごとに指示されている安全衛生上の事項、保護具着用義務を守り、常に安全第一に心がけること。 

③通勤の経路及び方法については会社に届け出たものとし、現場の始業時刻には作業開始できる状態で待機すること。ただし、会社が別段の指示をした場合はこの限りではないものとする。

④職務以外の目的で会社の施設、機械器具、物品等を使用又は持ち出さないこと。  

⑤勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと。

⑥会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと。

⑦在職中及び退職後においても、業務上知り得た会社、取引先等の機密を漏洩しないこと。

⑧酒気を帯びて就業しないこと。

⑨寄宿舎に入舎する従業員は別に定める寄宿舎規則を厳守すること。

⑩その他当社従業員としてふさわしくない行為をしないこと。

⑪業務上の指揮命令および指示・注意に従うこと。

⑫許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。

⑬自己の職務は正確かつ迅速に処理し、常にその能率化を図るよう務めること。  

⑭業務上の失敗、ミス、クレームは事実を速やかに上長に報告すること。  

⑮反社会的勢力もしくはそれに類する団体や個人と一切の関わりをもってはならない。

⑯他の従業員を教唆してこの規則に反するような行為、秩序を乱すような行為をしてはならない。 

⑰事業場内外を問わず、人をののしり、または暴行、流言・悪口・侮辱・勧誘その他、他人に迷惑になる行為をしてはならない。  

⑱パワーハラスメントまたはこれらに類する人格権侵害行為により、他の従業員に不利益を与えたり、職務遂行を阻害するなど、職場の環境を悪化させてはならない。

⑲他の従業員と金銭貸借をしてはならない。

⑳出勤に関する記録の不正をしてはならない。   

㉑住所、家庭関係、経歴その他の使用者に申告すべき事項および各種届出事項について虚偽の申告をしてはならない。

㉒使用者の許可なく事業場において、集会、文書掲示または配布、宗教活動、政治活動、私的な販売活動など、業務に関係のない活動を行なってはならない。また、就業時間外および事業場外においても従業員の地位を利用して他の従業員に対しそれら活動を行なってはならない。

㉓使用者の車輌の運転は常に慎重に行い、安全運転をすること。  

㉔服装などの身だしなみについては、常に清潔に保つことを基本とし他人に不快感や違和感を与えるものとしないこと。服装を正しくし、作業の安全や清潔感に留意した頭髪、身だしなみをすること。

服務規律で定めてほしいこと 

規定例でもわかるかと思いますが、服務規律に難しい内容は必要ありません。会社として守ってほしいことを明文化することが大切です。よく、「そんなこと常識でしょ?」という経営者の方がいらっしゃいます。ただ、私達の常識が、世代が違えば常識でないことも多々あるのです。会社は仕事をする場所であり、みなさんが働きやすい環境を作るためにも一定のルールは必要です。

パワハラ防止措置の義務化

2022年4月1日より、中小企業においてもパワーハラスメント防止措置が義務化されました。服務規律にもパワハラ行為の禁止について規定をいれておくことも有効です。

執筆者情報

記事の作成・編集:社会保険労務士法人アスミル

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